A.M.


転職先したばかりの職場は
デスク傍のゴミ箱が、皆、いつもいっぱい。
誰も気にならないのだろうか。

お湯がしたたるティーバック
コーヒーの紙コップ
お菓子のくず
花粉飛び交う春だから、ちり紙も山盛り。
湿ったゴミ箱って、いい感じしない。

そんなゴミ箱を
転がしてしまった。。。。
もう、絶望。
いそいそと素手でゴミを拾い集める。

「ゴミ箱の置き場所が悪いよね。
だって、昨日は竹村さんも転がしていたもの。」
小山さんがそう言って、加勢してくれた。

小山さんはなんだかとっつきにくい雰囲気の男性社員だ。
『仕事がデキる人だ』そういう風に、誰かに聞いた。
席は近いが、口をきいた事もほとんど無い。
だから、加勢してくれたことに驚きだった。
先入観って、思わぬギャップを産む。

小山さんにお礼を言い、「ごみ、捨ててきます。」
そう言って、ごみ箱をつかんだ。
素手で湿ったゴミをつかんだ後だ。
ひどく汚れたゴミ箱だけど、なんてことない。

「・・・すごい。」小山さんが言った。


P.M.


昼食を終えた小山さんがオフィスに戻ってきた。
「外、見て。すごいね。
あちら側は雨が降っているのに、こちら側は晴れているよ。」

デスクに座っていたこちらを、まっすぐに見ている。
とてもピュアな、小学生みたいな表情をして。

ほんわりと心を開かれて
少しだけ、ドキドキした。