EmT.43 ファド on リスボン | 小説と未来

EmT.43 ファド on リスボン

1999年11月28日は、リスボンでファドを聴いた。


 長いバス移動で、前日にリスボンに着いた。

 リスボンでは日本人の女性二人組と会った事を覚えている。しかしどこでどう出会ったのか、その辺りの覚えはない。

 二人組の女の子は別々に一人でヨーロッパへやってきたと言う。美術館巡りが趣味で、日本内からついには海外へ来てしまったわけで、日本人の女性の行動力はすごいなと驚かせれたものだ。


 その二人組とはどこかで出会い、どこかで別れた。見た目は地味な格好をしたバッグパッカーだったので、特に惹かれるものは残念ながらなかった。

 僕らはどこかのレストランで食事を済まし、ガイドブックを頼りにホテルを選んだ。


 そして休めのホテルに泊まった。部屋はトイレとお風呂が付いていない。ドミトリーではないが、共同空間も多いつくりになっていた。

 適当に休んで、風呂に入ろうとしたが、なかなか風呂が空かない。泊り客はあまりいないようだが、誰かが長く使っている。僕は少し不満に思いながら、お風呂が空くのを待った。

 何度か空くのを見に行った。開いた瞬間に別の客に使われてしまいたくなかったからだ。11月終りでリスボンは寒かった。早く温まりたかった。バスの長旅の疲れもある。

 何度目か、風呂場に行った時、長く入っていた客が出てきた。さっき会った日本人の女の子の一人だった。しかも下着姿。下をTシャツで隠している。なんだか気まずい状態になってしまったので、「ああどうも、ああお風呂どうぞ」みたいな。簡単な挨拶となった。

 同じ日本人の同じバックパッカー、同じガイドブックの宿に泊まることはあり得るが、あまりに予想外な状態での再会だったので、その後、彼女と会う事はなかった。


 翌日はリスボンをふらふらした。何をしたかも覚えていない。リスボンの灰色空の下を歩いていた。

 僕らはその夜、ファドと呼ばれるリスボンの伝統音楽を聴きに行く事とした。セビーリャのフラメンコが楽しかったので、ポルトガルでも伝統芸を観ようと望んだわけだ。


 そして夜が来た。

 僕らはファドを観に、リスボンの坂道にあるファドをやっているレストランを訪れた。ディナーショーみたいな感じで、食事を楽しみながら、もしくはお酒を飲みながら聴くのが一般的らしい。

 そんなところで僕らはテーブル席に付いて、ファドを待った。

 出てきたのは、赤い派手な服を着たおばちゃんだった。おばちゃんはなんだか渋い歌を歌い始める。アカペラでオペラみたいな歌声だったかのような、感じだった。なんだか心震えるものもない。日本の演歌みたいなものだろうか。年齢が合わないのか、僕らは場違いな気持ちにさせられる。

 友人Hを見ると、薄ら笑い。目があって、言いたいことは何となくわかった。

 30分ぐらいはいたろうか。タイミングを見計らって、僕らはその場を出た。

「まあ、ああいうものだということで」としか言えなかった。

 歴史ある各国の伝統文化、かならずしも感動できるとは限らない。


 リスボンは何となく気まずい事に出会う事が多かった。

 特別嫌な事もなかったが、これと言って楽しい事もない。ポルトガル、かつての海洋帝国に、僕らは何となく来たという感じがした。


つづく。