「何気ない毎にちを貴方に伝う」1ノ6 | 小説と未来

「何気ない毎にちを貴方に伝う」1ノ6

雨が過ぎ去った朝に、「おはよう」


今日もいつもと変わらない毎日の始まりに目覚めた。



昨日は久々に、僕を登校拒否中学生に派遣している担当者に会った。


雨の中の喫茶店は濡れた町の中にある。空間は涼しいを越えて、少し寒い。暑さに慣れた僕には少し辛い。


「どう?」と、彼は僕に尋ねる。


どう、と聞かれても、どうという事もないのだが、「いえ、まあ、問題なくやってます」と答える。


彼は何も言わない。実は悪い話なのかもしれない。僕はあの子に切られるのだろうか?中学生であってもお客なわけであって、嫌だと言われれば僕は必要なくなる。時給制だから仕事がなくなれば稼ぎどころがない。これは面倒な話になるのだろうか?困った話かもしれない。


「そうか。それはよかった。いや、今日はね、来週なんですが、一週間ほど、研修を受けてほしいんですよ。特に難しいテストとかじゃなく、一通りセミナーで話を聞いてもらえればいいだけなんで」


そんな話か、と僕は少し安心する。

「時間は?」


担当者は一枚のコピー用紙を取り出す。ピンク色のその紙には、学校の時間割のようなものが書かれていて、黄色いマーカーで一部縁取りされた部分がある。午後の13時から17時まで、月曜から木曜まで、それが毎日続いている。

「この予定なんですけど、一通り聞いていただいた方がようかと思いまして」

3つ年下の担当者は、年上の僕に気を遣って、少し丁寧に話をしてくる。きっと僕が年下なら、「これは受けといてほしいんだよね!」と強く押してくるにちがいない。


「ええと、時給が減ってしまうのが、ちょっと」と、僕は柔らかく問題点を指摘する。


「その分は一応手当ては出る事になってるんで、まあ一日、2,500円ほどで割りは悪いんだけど」

彼は恐縮そうに、僕の顔色を窺う。


どうせいつも15時まで、同じ程度しか稼げない。17時までという長さはあるが、ここは断らない方がいいだろう。

「ええ、いいですよ。わかりました。あの、午後が休みになってしまうのは、あちらの…」


「ああ、あちらには僕の方から伝えておきます」


「そう、ですか。わかりました。よろしくお願いします」


と、いうわけで来週は登校拒否子とは午前だけでいいらしい。なんとなく肩の重荷がふと下りるような気分になった。



なんて事が昨日はあった。


その程度の話である。だからと言って、僕の毎日に大きな変化が起きたわけではない。


「だから何?」と君は不満に思うかもしれない。


僕も思うんだ。もう少し、気の利いた、おもしろい話をするべきだと。


何気ない毎日が続く。今日は大きな雲の傘の下、少しだけ暑さも和らいで、町の人も苛立ちが消えたかのように穏やかだ。こんな日々が続くといい。ただそんな事を思う。


(つづく)