新世界64-運命の幸雲 3
公園の隅で、沙希を見つめていた。
もし、彼女が君の存在に気づかなければ、もしくは、君を避ける素振りを見せたら、君は彼女に話しかける事はなかったろう。
ニシキは掛ける言葉が見つからなかった。
紹介された女ならうまく騙せる自信があった。
何かの会で出会った女性なら、気さくに話しかける術を持っていた。
でも公園に座って、物思いに耽っている女性にどう話しかければいいのか、ニシキは知らなかった。
自分への苛立ちはあったが、その日、ニシキはもう止めようと考えていた。
沙希はニシキに気づいた。
ニシキは沙希の視線を感じ、小さく会釈をした。
沙希もそれに対して軽くお辞儀を返した。
「あ、いえ、このあたりで」と、ニシキは言って、先に少し近づいた。
「あ、ええ」と、沙希は何だかわからず答えた。
「いや、この間もここにいたなあなんて思って」と、ニシキは沙希に言った。
「時間が戻ったのかなあ、なんて」
沙希は笑みを浮かべた。
「ええ、ここにいました」
でも、話はそこまでだった。話はそれで終わってしまいそうだった。
そこへ、サッカーボールが転がってこなければ。
(つづく)