新世界63-夢世界 19
「さあ、今度は君が計画を立てる番だ」
夏になっていた。蝉がうるさい中、僕らは公園の隅で策略を練る。
でも僕は何も思い浮かばない。
左の男が言うような計画を僕は持っていない。
顔の細い左の男、顔の四角い右の男、サーファー風の顔の黒い男、パソコンおたくっぽい黒縁めがねの男、もう一人パソコンおたくっぽい小太りの髪の長い男、白髪交じりの髭もじゃじいさん、僕は彼ら6人を全員知っている。そしてその6人が僕の顔を見つめている。
夢とは、唐突にわけもわからない世界へ僕を連れてくる。僕はこれが夢である事を知っている。この夢にいる彼らは僕の事を知っている。しかし僕はこの夢の全てを知っているわけではない。夢は突然僕をある場所に置き、僕を追い詰める。時には予想もしない力を発揮する事ができるが、時には現実と同じように何も出来ないときもある。
今、僕は何もできない。何も思い浮かばない。
僕は、溜息をつく。
「おいおい、ボスはあんたを優秀な頭脳を買って、仲間に入れたんだぜ。いつまでも人を殴り倒すためだけに仕事をしててもしょうがねえだろう?」
と、左の男がいつもより荒い声で僕に言ってくる。
僕には返す言葉がない。
ただ頭の中はあーだこーだで詰まっている。僕はニシキ君の結婚詐欺話を通して彼らに知り合ったのだ。別に泥棒になって金を稼ぐつもりなんてなかった。こいつらはただの強盗集団だ。僕はいつまでもこんな奴らと一緒にいたくはない。確かに生活は裕福になった。腹を空かせて、食パンをかじる日々も終わったし、臭いゴミの山で金属を探す必要もなくなった。でもいつもでもこんな事をしていたくはない。
もちろんそんな事を彼らに言えない。言ってしまえばどんな目に合うかわからない。夢でも夢とは思えないくらい恐い目に合う。
僕はただ背中にびっちょりの汗をかくだけだ。脇からじわっといかにも臭いだろう汗が垂れ落ちてゆく。頭からも汗がダラダラ出てきた。
「まあいい。わしが計画を出そう」
と、髭じじいが言う。
「ある政治家の息子の話だ。その政治家自体は汚職事件で引退し、最後はガンになって、5年前に死んでしまったんだが、その政治家は大量の資産を残した。政治家の妻も彼の死の1年後に後を追うようにして亡くなり、今ではその政治家の息子が豪邸に一人で住んでいる。そいつは親父の後を継ぐこともなく、他にまともな仕事をする事もなく、親の資産だけで生活している。結構な資産を残していて、もう40になろうとしているのに、結婚もせず、遊びまくっているそうだ。
今回はその豪邸を狙う」
「さすがクラさん、いいネタ持ってるね」と、サーファー風の男が言う。
「よし、わかりました。全部調べてみますよ」と、小太りのきもい男が言う。
「まさに狙いどころだな」と左の男が言う。
「あんたもそういうのを調べるんだな。後は全員でやる。大切なのは、あくどい奴を調べる事だ。そういうネタが俺らには必要なんだ」
と、僕は右の男に言われる。
あくどい奴ってあんたら強盗団が一番あくどい。
でも彼らには彼らなりの正義があるらしい。世の中のために仕事をしている金持ちは襲わない。彼らはそういったボンボンや不正に稼いだ金のある会社、そういった場所を狙う。ニシキ君に対してもそんなお嬢を狙わせていた。そういえば最近彼は夢に出てこない。もともといなかったように僕の夢からは葬り出されてしまったらしい。とにかくここにいる彼らはそういう連中だ。
「おっし、やってやろうか!」
サーファー風の男がそう言って、僕らは次の仕事に正義の心を燃やす。何が正義の心かはわからないが、僕は今、この世界についてゆくしかなさそうだ。