新世界61-運命の幸雲 2 | 小説と未来

新世界61-運命の幸雲 2

いい女を見ると騙したくなる。


女は一人公園で悩んだふりをしていたから、ニシキはどうしても騙したくてしかたなかった。



ニシキは結婚詐欺師だ。

基本的には組織が紹介する結婚紹介所とか、サークルとか、パーティーとか、そういったところで、組織の奴らが決めた女を騙す。女は金を持っていて、騙されやすい。ブスの年増や美人の気高い女が多い。

ここ数回、ニシキの仕事はブスの年増が続いていた。そして最後の女を騙してから、組織からの連絡がしばらくない。知り合いのカズという人に会ってどうしたらいいか尋ねてもいいが、それも面倒な気分だ。


お金はまだあった。

ニシキは金持ちを装うために高額の物を身に付けている。それは女からもらうものがほとんどだが、時として正体を知られないために自分で買わなくてならない場合もなる。今はそういった生活であるため、毎日お金がかかる。


軽い稼ぎが必要だ。



女は公園で悩んだふりをしていた。

ニシキはきっとどこかのどうでもいい男に恋でもしているのだろうと想像していた。


まずは人間観察から入る。


そして女の全てを知る。


女は動き出し、ニシキは後を追う。公園を離れ、最寄の駅に出た。やがて電車に乗り、郊外の方へ向う電車に乗る。4駅目で降りた。

しばらく歩いていく姿を尾行した。


彼女はアパートの二階へと行った。

1DKもアパートだ。入口には一応オートロックが付いている。壁を乗り越えれば侵入されてしまうが。

どうやら彼女は一人暮らしのようだ。


その後、ニシキはその女を何度か尾行した。

学校の先生をやっていた。年齢は自分と同じ26歳、男はいなそうだ。


騙しても、金は出てこないだろう。


それがニシキの最初の結論だった。

だけどニシキは学校の先生が嫌いだった。いい女風の子が嫌いだった。


中学生の時、少しだけ綺麗な女の子がいた。ニシキは心からというほどではないが、その女の子に少しだけ好意を抱いたことがあった。好意を少し抱いただけだ。それなのにニシキはその女の子にある日呼び出された言われた。

「わたし、ニシキ君の事、好きでもなんでもないから」

何でそんな事を言われなくてはならないのかわからなかった。でもそう言われた。

ニシキは後で知った。周りの連中がその女の子をストーキングしているというデマが流していたようだ。

そうであっても、そんな事を言われたくはなかった。

そんな嘘に流されて、そんな事を言う女は嫌いだ、というのがニシキの至った結論だ。


『彼女はあの女に似ている』

ニシキは思った。

『今度は実際にストーカーもしているし、自分も墜ちた。だからあの女を騙してみよう』


理由は金じゃなかった。

過去に対しての復讐だった。

自分が持った力に対する試みだった。