新世界43-無職の暇人 11
僕はネットで知り合った女の子とデートをした。
メールのやり取りをしている時は、騙されているのか?と感じたが、僕はホモの男が来ようと、人殺しの詐欺女が来ようと、もはやどうでもいい気分になっていた。
気分的には毎日退屈すぎたのだ。
駅にやってきたのは、最近テレビでよく見かける入社一年目のアナウンサーのような可愛らしい女の子だった。
僕はどんな酷い目に遭うのかと、恐る恐る話していたが、彼女の態度を見る限り、怪しい素振りはいっさい見られなかった。
彼女は一ノ瀬八重子と名乗った。彼女は絵が好きで、モネやゴッホの話をしたが、たまに暇つぶしに美術館へ行く僕には彼女の話す絵がどんな絵なのか、ほとんど想像もつかなかった。
僕らは大きな美術館で現代アートを見て回った。名前も知らない最近の芸術家の絵が並んでいて、面白みはあったが、どこが芸術なのかはさっぱりわからなかった。それでも彼女はそんな作品を一品一品にじっくり見入っていた。僕は彼女の後ろからそんな彼女と絵を同時に眺めていた。
やがて一ノ瀬八重子と絵は一体化し、僕は訳のわからない想像をしていた。絵の中に入り込む一ノ瀬八重子?うまく表現できず、意味がわからない。
「おもしろかった?」と、美術館を出たときに僕は彼女に尋ねた。
「ええ、おもしろかった」と、一ノ瀬八重子はにっこり答えた。
そして僕らはちょっとしたおしゃれな居酒屋で夕食をした。彼女は今日見た絵やどこかで見た絵の話をずっとしていた。僕は彼女のこまごました説明をずっと相槌を打ちながら聞いていた。
居酒屋を出るとき、僕は僕のような暇な人間に付き合ってくれたお礼も込めて、その夕食をおごるつもりだったが、彼女は頑なに断り、きっちりと割り勘した。
「また一緒に行きましょ」と彼女は僕に言ったが、それはお世辞にしか聞こえなかった。
彼女はただの暇人なのか何なのか、僕には大きな疑問が残った。
とりあえず家に帰ってから、彼女にしっかりメールをした。
メールはすぐに返ってきた。
大した内容ではなかったが、今日の出来事が現実である事を僕はしっかりと感じ取った。
素直に喜ぼう。ニコ。