新世界13-夢世界 4 | 小説と未来

新世界13-夢世界 4

2019年 冬がやってきた。


温暖化の進む世界だが、今日は酷く肌寒く、やがて雪は降り始めた。

今年は雪の降る冬になりそうだ。

こんな日は日の当たらない冷たい家具に囲まれた家の中で、布団に包まって寝ていればいい。

だけれど、僕はあえて家の外にいた。



街頭の大型スクリーンでは、路上で亡くなるホームレスが急増している問題を取り上げていた。

『この冬の寒さは多くのホームレスを死に追いやる事になるだろう』

そんなニュースをホームレスが包まる歩道橋の下の傍で観ていた。



まともを守り抜いた人間は足早に街の中を過ぎ去って行き、僕らダメ人間は死体のように路肩にうずくまっている。この光景が当り前になったのは何年前からだろう?僕はふとそんな事を考えるが、大元は思い浮かばない。そんな記憶はどこか遠い過去に捨てられてしまった。


今はこれが当り前だ。

でもこの当り前の光景はずっと昔、どこかからともなく生まれ始めていた。

どうにも出来なかったのに、今になって騒いでいるのはアホらしい


止められなかった世の流れ、政治もできなかったし、僕もできなかったのだよ。


報道は、政治家に対してホームレス問題を解決するよう訴えていた。

たしか12月始めに見たニュースじゃ政治家は福祉の充実をうたっていた。

民間企業の代表者は自分たちの税金負担が増す事を懸念していた。

世の中ではそんな国家と民間団体との抗争が生まれていた。

僕は街頭で見られるテレビでそんな状況を理解している。


でも、そんな全てはどうでもいい事だった。

僕にとっては国家も民間企業もただの金持ちにしかすぎない。

偉そうに自分の立場を守り抜いているアホ野郎にしか見えない。

どんなに優れた人間も、僕にとっては皆敵なんだ!


生まれてくる怒りが瞳を鋭くさせる。

心はすさむ。すさみの色が増してゆく。

冬の白い雪が僕ら駄目人間のすさみ色を消え隠してゆこうとする。僕は熱を持ってその雪を溶かす。

自分はここにいるんだ!と小さな抵抗をしている。


ネオンの光に輝く年老いたホームレスの目が輝いていた。


彼は何のために生きているんだろう。


何のために生かされているのだろう。


希望はあるのかな?


希望を作ることはできるのかな?


この夢はきっと始まりにしかすぎないだろう。