ずっと西にある島 43.逸登 | 小説と未来

ずっと西にある島 43.逸登

帰ることは出来なかった。


キウはまた同じ島に辿り着いた。


ここが未来の世界だとしたら、海の向こうは存在しないだろう。


全てが滅んでしまった後の世界にただ一人居ついたのだとしたら、

東の世界を目指すことは無駄だろう。


キウは自分がここにいる理由がわからない。


『こんな事あるだろうか?』



フースムの地に人はいなかった。

この地は一般社会=人との繋がりを嫌った人が辿り着く最後の場所だと、グァンダーの人は云っていた。現実的な世界なら浮浪者の集まる場所とでも云える。


ここはフワーナ島で比較的寒い場所だ。

時期がムフォだったので、まだ暖かい。

短草しか生えないやせ細った地だ。


キウは地上の上を歩く。モッカンバの商人にもらった水と木の実はまだ残っていた。

『まだしばらくはこれで生きてゆく事ができるだろう』



そしてキウは高くそびえ立つフースム山を登りだした。

理由はなかった。

理由なく、ただ、まだ行った事のない場所へ行こうとした。

まだ知らない場所には知らない事が待ち受けているかもしれないという単純な理由だった。


体はすでにヘトヘトだった。それでも体が動く限り、キウは体を動かした。何かに取り付かれているみたいだった。体は何を考えることもなく、山の頂を目指した。


辺りはすっかり霧に覆われ、何も見ることができなかった。

道なき道ではあるが、木々が生えない山は邪魔するものがなく、比較的登りやすかった。

それでも少しずつ上へ行くに従って、崖にぶつかり、キウは迂回路を探さざるをえなくなった。

雲がさっと引いたかと思うと、今度は強烈な太陽が照り付けてきた。海の上と大きくは変わらない。自然の驚異に晒されているだけだと、キウは強く感じる。


闇が覆い、キウは岩場の影に隠れた。夜は寒く、凍え死ぬかと思い、寝ては目が覚め、眠り落ちては、また目を見開いた。

仄かな明かりが覆い、キウはその暖かさを感じ、眠りに落ちた。


夢の中ではグァンダーの地にいた。現実感のない世界だったので、すぐに夢だと感じた。夢の中を自由にしてやろうと思ったが、思うようには行かず人はおらず、誰もがキウに近づこうとはしなかった。そしてキウは目が覚めた。恐ろしいほどの孤独を感じて胸を痛めた。


目が覚めて、木の実を食べ、水を口にした。しばらく歩くと大きな川が流れていた。そこで水を補給した。

お腹は減っていたが、この先を思い、水をたらふく飲んで、腹を満たした。まだ残る木の実はとっておかないとならない。


頭が痛かった。どうしようもなく、頭が痛かった。

でもキウは歩いた。

その日は一日中いい天気だった。どこまで行っても晴れは続いた。気温はちょうどいいくらいで、それだけがキウにとっての幸運だった。



砂利道を歩き、岩場を登り、キウは大きく広がる草原に辿り着いた。

そこには首の長い羊が暮らしていた。毛の生えたヤギというべきだろうか?


動物たちはキウに気づくと逃げていった。

キウは逃げてゆくヤギを追って、歩いていった。


その先には一軒の木でできた家があった。小さな掘っ立て小屋だ。

そしてそこには髭をぼうぼうに生やしたおじいさんが座っていた。


キウは秋の森の仙人を思い出していた。

そして助かったんだと安堵していた。