ずっと西にある島 32.僕事
今日も彷徨うこの森の中。
ムオマーの地。
いったいどこまで、非現実に陥ってゆくのだろう。
何が何だか、もはやわからない。
混乱している。混乱させている。
それでも日々、生きていて、毎日は続いている。
意識ある世界の中にいるのだから、きっと生きているのだろう。
キウは結局何がしたいのか見つからない。
重い荷車を押すだけ。汗をかいて、疲れているだけ。
自分の信じていた全ては夢だったと諦めるしかない。
求めていた世界はあっただろう。
求めていた人もいた事だろう。
求めていた自分にもなれただろう。
でも全ては過ぎ去った。
もう、求めている方向には向わない。
すでに求める力にも欠け、この世とも折り合いがつかずに生き場を見失っている。
それでもキウは生きている。
微弱な思いで、自分らしく生きたいと、生き場を求めている。
森の中で、僕は生きてゆけるだろうか?
これは極めて僕事の望みだ。
始まったのは僕事の話だ。
だから、僕は僕事の生活をしてゆくしかない。
誰とも関わらず、僕は僕事の生き方、つまり自己満足に至るしかないのだ。
「僕のわがままを受け入れてくれるかな?ハバルヒラさん
僕はこの森で生きてゆくしかないんです」
「君に生きる猶予が与えられている限り、私も森も君の生き方を受け入れるだろう。
でもまだ君にはこの荷物をカルミンヌオールまで運ぶ使命が残っている。
全てはそれからでもいいだろう?」
「そうですね」
キウらは二日間をかけ、シュガーサの管理する森を進み、カルミンヌオールの地へとやってきた。
もうすっかり日が沈み、森は夜になっていた。
世界は青黒かった。
キウはかつてない疲れを感じていた。
暗闇に隠れ、彼らは荷車を平らな場所に止め、静かに火を焚き、夕食を摂った。
静寂の中で、フクロウのような鳴き声の鳥が鳴いていた。
「カルミンヌオールの地の中にいる」
ハバルヒラはキウとユスティスに今の居場所をそう説明した。
でもキウもユスティスも疲れ、あまり多くの話をする気にはなれずにいた。
火を消し、寝袋に包まり、汗を拭いて、眠りに落ちた。
静かな夜だった。
何か桁違いの大きな出来事が起きる前触れのようだった。
ただ時を待った。何かが起きるのを待っていた。