ずっと西にある島 22.時刻 | 小説と未来

ずっと西にある島 22.時刻

まだ実が小さく、葉ばかりが目立つりんご畑を抜けた先に時計台はある。


時計台の真下まで来ると、その大きさに圧倒される。


時計台はモクラという果物栽培が盛んな、グアンダー内の地方にある。


100年ほど前に、エルモウという機械師が作ったと言う歴史が残っている。

キウはその事をオーカッと過ごした頃に歴史の授業として教わった覚えがある。


大きな石がいつも積まれた時計台の中に入る。

まるでピラミッドとかのような歴史的建造物を思わせる作りである。


入口は意外と狭く、中も柱だらけで、大きさの割りに意外と狭い。

石で出来た階段が上へ延び、一方通行しか出来そうにない。


階段をしばらく上り続ける。

踊り場があり、それをまた逆へ昇り、5階くらいまで来たところで大きな空間が広がった。

何もない場所にポツンと一人、男が石の出っ張りの上に座っていた。


彼はキウの方を見て、にこりと微笑んだ。

「やあ、君がキウだね」


時計台には、プリストとアッカットという人が毎日働いていると聞いていた。

彼はそのどちらかだが、聞いている話で、年上の方のプリストという人だとキウは推測した。


「君の事はサパジから聞いているよ」


「サパジさんから?」


「ああ、遠い世界からやってきた人間がいるってね」


「遠い?かどうかわからないけれど、少なくても僕はこのフワーナで生まれた人間じゃない。

 それでも、僕はこのフワーナに住み始めて、もうすぐ2年が経つ。

 もう、帰ることもないでしょう」


「帰りたいかな?」


「そうでもありません。戻っても何があるわけでもありませんから」


「時は一方にしか進まないから、確かに君が元の世界に戻ることはないだろう」


やはり彼がプリストのようだと、キウは確信する。

聞いている話で、プリストは40代、アッカットはキウと同じ齢くらいだと言う。

うつむいていると、薄暗いのと、長い髪に隠れていたので若く見えたが、顔を上げると男は確かに40過ぎに見える。


「あなたがプリストさんですね?」

と、キウは尋ねる。


「ああ、名乗ってなかったね。俺はプリスト、アッカットは屋上で正午の鐘を鳴らす準備をしている。

 ここで働いているのは俺たちだけだ」


「サパジさんがあなたに会うといいと教えてくれました。

 とても賢い人だから、きっと為になるって」


「そうか。確かに、俺は賢いかもな。なにしろ、サパジが統領になるまでは俺が統領だったからな」


「そうなんですか!」

と、キウはお世辞っぽく驚いてみせる。


プリストは少し自慢げな顔を覗かせ、会話を続ける。

「でも俺は統領をあいつに譲った。それがいいと感じたんだ。

 本当はあいつがここで時計台を動かす仕事をするはずだったんだ。

 まあ、いろいろあってな。

 だからサパジもたまにここに来る。暇なときはここの下にある時計仕掛けをじっと眺めている。

 意外と地味な男さ。あいつはな」


キウは黙っていた。

空間の中を大きな歯車がギュルギュル言いながら動く音がする。

この国の僅かな電力と、集めに集めた鉱物で作られた最高建築がここにはある。

空間はその音で埋め尽くされている。