ずっと西にある島 20.然時
なるべく何もない日々がいい。
キウはとにかく忙しい変な夢を見て、そう感じて目が覚めた。
雨静海町の頃の夢だった。
忙しい日々はそう思った頃もある。でも何もない日々の今は何かが起こることを待ち望んでいる。
いつもバランスの悪いばかりだ。
太陽が昇れば、パン屋へ行く。
パンを腹に入れて、領事館へ行く。
忙しい事はまるでないが、規則正しい朝は休日もなく繰り返される。
昔は朝起きるがとても苦手だったキウは今は苦手ではない。
夜は暗くなれば寝るしかないし、朝日が昇れば自然と目が覚める。
嫌な奴もいないし、特に面倒事もない。どちらかというと、家にいると暇だし、誰かと話でもしたいなあと思うし、お腹も空くから体を起こして出かける。
暇に溢れているから、何かがしたい。
そして目が覚め、いつもの生活を繰り返す。
海から続く中心通りは死者を葬るというムフォの地へ続く南西へと延びている。
キウは北西に広がる畑から、南東方向を眺めている。
太陽は北側だ。
この島には大きくそびえ立つ建物が二つある。
一つは灯台であり、灯台は南東の海辺より、東に広がる海を照らしている。
もう一つは時計台だ。十二時間という単位はないが、この国の時計も針が中心より弧を描き、右回りに一周する。長針しかないが、この国ののんびりした風土ならそれだけで十分だ。
だいたい、朝の8時、10時、正午、午後2時、4時、6時にあたる時間に鐘が鳴り、人々は太陽とその時計台の鐘の音を頼りに一日を過ごしている。
キウは今日もその鐘の音を聞きながら、一日の終わりを待っている。
季節はワースだ。とても暖かい。
日々、畑の若草も生長してゆく。土色しか見えなかった畑は、今ではすっかり若草色で染まっている。
キウは何かが始まる予感を持っているが、実際は何も起こらない。
自分の内からはまだ何も生まれてこない。
退屈な日々は続く。