ずっと西にある島 17.生有 | 小説と未来

ずっと西にある島 17.生有

キウが一人海辺を眺めていると、クリショバさんがやってきた。


そしてキウが座る砂浜の横に腰を下ろした。


「風邪をこじらせて、亡くなってしまったそうだ。


 もう齢だったからな。仕方ない」


クリショバさんはそう言って、キウの肩を優しく叩いた。


「人はいつか死ぬんだ。当り前の事だ。


 人が死ぬのが悲しい事も当り前の事だ。


 キウ、君もそう。僕もそうだ」


悲しい目をしているキウにクリショバはそう声を掛ける。


「なんていうか、どんどん過ぎてしまう。


 僕の目の前からいろいろな人が消えてしまう。


 いつもどこかに誰かがいるけど、僕は大切な人をいつも失い続けている。


 そんな気がする」


遥か遠い地からやってきたキウの想いをクリショバは察する。


「キウは人よりも多くの別れがあったんだな。


 でもそれに等しく多くの人とも出逢った。


 ここで終わりというわけでもないだろう?まだ続く。


 キウの出逢いも別れも、一生続くものだよ。


 イマエダさん皆と別れなくちゃならなかった。


 その事はとても悲しいことだったろうけど、自分の人生は幸せだったと、


 イマエダさんはサラさんにそう告げたそうだよ。


 ムフォの地で安らかに眠ることだろう」


「ムフォの地?」


「そうさ。死んだ者は皆、西にあるムフォの地から遥か地底に葬り去られる。


 死んだ者に親しい二人がその地まで死者を運ぶんだ。


 知らなかったのかい?」


キウは頷く。そして尋ねる。


「どうしてムフォに?」


「ムフォの下にはちょうどカカラの神が住んでいる。



 だから死んだ者はその地から地底にいるカカラの元まで投げ込まれ、カカラの力で無に変えられる。


 それはとても悲しい事だけど、人はいつか無に還(かえ)る。


 だから皆、生きている間は楽しくて、いい人生を送ろうとするのさ。


 それがカカラの教えだからね」


人は、天国にも行かないし、生まれ変わる事もない。今までのキウの知る死後の世界とこの世界の死後は違う。キウには本当に死んだ先どうなるかはわからないが、確かに死後は何もないのかもしれない。もし死の先に何もないのなら、できる限り今を大切に生きたい。そう感じさせる考えも生まれてくる。


クリショバは話を続ける。


「死んだ者は荷車に乗せられ、ムフォの地まで大人二人によって運ばれる。


 死者に親しかった二人が片道七日、一日おいて、往復一五日旅をするのさ」


そしてこの事はその通り、イマエダさんの遺体は、息子であるイットコさんとイットコさんの従兄弟であるサカナーさんで行われる事となった。


旅の途中には宿も食堂もない。人々は草原に野宿し、十分な食料と水を持って、15日間を送らなくてはならない。それは過酷な事だけど、皆それを行う。文明の利器に頼る事はない。


この世界は便利で楽な事もないし、不便な事も多い。

贅沢はできないし、風邪をこじらせ死んでしまう人もいる。

それでも一定の発展をし、安定を保とうとしている。

昔ながらの教えを守りながら、未来へと向っている。


この世界にキウは生きる楽しみを感じられる。