ずっと西にある島 15.独夢 | 小説と未来

ずっと西にある島 15.独夢

今日も何もない一日である。


毎日、領事館内をうろうろする日々が続く。


『僕はこんな所で何をしているのだろうか?』とキウは思う。


退屈な時間は教会に行き、カトレアさんの優しさに包まれる。

特に何をするわけではないが、教会の長いすに座り、カトレアさんの祈りを聞きながら、黙祷していると癒される。

そんな時間が最近のキウには良くある。


その日の午後、出かけていた統領のサパジが戻ってきて、部屋に呼ばれた。


「最近はどうだい?」

と、サパジはキウに聞く。


「サパジさん、僕はこの世界に居ついてしまったみたいです


領事館に来て、何日も過ぎた。キウはサパジにいろいろな話をした。


生まれた頃の話、友達のいなかった少年時代の話、ゲームの話、電化製品の一つ一つから、建物の一つ一つ、学校で学んだ事、それからいくつかの恋話まで。


キウは話しているうちに、懐かしい思い出に浸った。その思い出を思い出せば思い出すほど、自分の人生が最悪なものではない気がしてきた。


思い出は悪くない。少なくても僕の生きてきた人生だ。


懐かしさはふとキウの心を元気にさせる。今ある世界にない話をすると、変な優越感や人生の楽しみに触れている気がしてくる。


そして、ほんの少し過去の世界へと戻る道を考えていた。


「僕は過去へ戻るべきじゃないか」

とも、サパジに伝えた事もあった。


でも、戻る事はなかった。

キウは知っている。過去にはたくさんのいい思い出もあるが、それ以上多くの満たされない気持ちがあったという事を。


「僕はずっと孤独でした。どこにいる時もとても孤独です。それを満たしたいと思っていたら、ここへ来てしまったのかもしれません。誰かと心で繋がり合いたい。そんな思いがここに僕を運んだのかもしれません」

と、キウは今自分がフアーナ島に住んでいる理由を述べた。


サパジは言う。

「人と人の繋がりって何だろう?私においてはそれを最も大切にする。もっと強調するんだ」


キウはキウで考える。

「僕は柔和を考えて、大切にしている。

 生まれたままに大人になった。生まれたままに心を持った。

 僕は僕でありたいと、今日も心を持とうとしている。

 そして僕は僕の望む、とてもつたない夢物語を語っている」


サパジは言う。

「だとしたら、君は君という存在しか考えていないことになる。

 君の世界に落ち込めば、君は君しか持てないだろう?」


キウは答える。

「結局、僕はゲームの世界に逃げ込んで、生きていたのかもしれない。

 そこでなら、英雄にも、王子にもなれた。僕は擬似的に柔和で優しい英雄気取りになれた。

 現実の生活はたった一人の市民でしかないから、その事が虚しくて、かといって戦って人の上に立つような気なんてなかった。

 あの世界(日本)では誰だって英雄になりたいって思っているんだ。誰もが上を目指すように気合を入れられ、そういう回答を持っていないと否定される。僕はそんな意思を与えられようとしていた。

 どうやって生きてゆくんだ。どうやって金を稼ぐんだ。もっと人の上に立つために、もっと頑張れって。

 僕はそんな事は望んではいなかった。そんなプレッシャーを与えられるのがとても嫌だった。

 僕はありのまま、柔和で優しい生き方をしたかった」


サパジは頷く。

「人は生まれた環境そのままに左右される。

 私も望んで統領になったわけではないからね。

 誰もがうまく生きているわけではない。

 だから繋がるんだ。

 繋がり合い、話し合い、そうすれば君も私も、エルトやクリショバももっと自分に近い人間であることが理解できるはずさ。

 誰もそんな強い人間はいないってね」


キウはそんな事をサパジと話した。


自分が孤独だと思えば、どこまでも孤独になってしまうのかもしれない。


ありのまま、話せれば、少しずつ、人と繋がり合えるのかもしれない。


キウはそんな迷いの中で毎日を送っている。