秋の森 11.揮宇と果実の世界 | 小説と未来

秋の森 11.揮宇と果実の世界


毎日叫んでいたからきっと疲れてしまっていたのだろう。


出逢えた事に安心したから、ゆっくり休みたくなったのだろう。


揮宇(きう)は眠った。夜も昼も関係なく。


果実(かみ)も眠る。そのすぐ傍で。



揮宇と果実は二人きりの空間に入りこんでいた。


誰もいない秘密の場所。



自分を曝け出してしまっても構わないのだよ。


誰もいない。誰も気にしない。何もとがめるものはないのだから。



揮宇は枯葉のベッドに眠っている。


秋の森の香りが鼻をくすぐる。


まだ目は覚めない。いつまでも眠ろう。意識はなくなったままでいい。



果実は少し離れた場所で葉に埋もれ寝たふりをしている。


目を開けると優しそうな男の子が眠っている。


安心できる人でよかったと感じる。


葉が降りまた埋もれ、少年の香りが少しだけ混ざり合っている。



「孤独が与え続けたものは何?」


「とても淋しかったかな?」


 二人は心と心で語り合う。


「今は何を感じている?」


「揮宇を感じている。そこに揮宇がいる」



明くる日も、二人は眠っていた。


「揮宇は寝てばかりだね」


「さあ、そんな事はなかったんだけど、急に眠くなったんだよ。

 少しだけ暖かくなった気がする。

 秋の次は冬のはずなのに、春のように暖かい」


「きっと季節に関係なく、森は暖かくなったり、寒くなったりするんじゃないかな。

 暗くなったり、明るくなったり、どこかで雨が降ったりする。

 でもこの森には届かないけど」


「どこかで風も吹いている?」


「どこかで風も吹く。この森には届かないけど」


「風を感じるの?」


「風は音がする。カサカサビューって鳴り響く。

 すると木々が驚いて、少し気を悪くする」


「木に気がある?」


「くだらない」


「そんな気は…」


「わかってる。だって木に気があるのはその通り。

 わたしは木々が好き。こうしてここで木を感じていたい」


「このままずっとここにいるの?」


「それはまだわからない。今すぐ答えを出したくはない。

 揮宇は?」


「僕も同じ。君といる事は壊したくない。

 大きな土台が整ったんだ。君と木と僕、一つの家族になれたんだ」


「この木の下で眠りましょう。眠りたい日は眠りたいだけ眠りましょう」



秋の森で冬眠する。食欲を忘れ、揮宇と果実は眠り続けた。


長い長い時が気を変えるまで、二人は眠り続ける事にしたんだ。


眠りの中で語り合う。夢幻の世界によく似ている。


誰も揮宇と果実の世界を邪魔するものはいなかった。


いつまでも、いつまでも。