秋の森 7.森のルール
想像しよう。
想像される限りの世界を形にしてゆこう。
そうやって人類の世界は繁栄していった。
だから想像すれば、可能性は広がるはずだ。
揮宇(きう)はその事を考える。
天高く突き抜ける木の上の世界。
どこまでも広がる森の外の世界。
地表に散らばる葉葉の下の世界。
それは果てしない宇宙のように、永遠に続く世界のようにも感じられる。
求める先の世界には何かが待っているかもしれない。
それともただの宇宙の塵のように、秋の森を彷徨い続けるだけになるのかもしれない。
始まりの人は言った。
「ある者は天を目指し木に登り、ある者は森の出口を探しに旅に出た」と。
揮宇もまたどこかへの答えを出したいと感じ始めている。
もしくは誰かを求めている。
それは女性という存在、かと言い切れるわけでもない。
秋の森は確かに男や女を忘れさせてゆく。
異性がいない世界では性欲も湧かないものだ。
ストレスもないし、疲れも感じない。だから興奮もしない。
ここで永久に暮らす人となるのも悪くはない。
葉葉の道を辿って、新たな旅に出ようか、はたまたここで暮らすか、
揮宇はそろそろその答えを出したがっている。
どれだけの日々が過ぎたろう。もう日を数える事はとっくにやめてしまっている。
秋の森の季節はいつまで経っても秋であり、いつまで経っても変わらない。
この世界ではどこかにお店ができるわけではないし、逆に潰れる店もない。
店の話をしても仕方ないが、とにかく変わる様子は窺えない。
人の想像はまるで加えられない。自然のままに生きるしかない。
昨日掘り起こしたキノコがあった場所も、すでの落ち葉に埋められ元のままになっている。
落ち葉の深き底は腐葉土と化し、また木々を成長させる有機分を作り出している。
永遠の循環、揮宇はそのルールを知っている。
この世界は変わりなく回転を続けている。
それでも仙人は言う。
「全く変わらないわけでもないんじゃね。
木々は時が経てば太くなり、少しずつ老いもする。
死んだ木は消え、そこにはまた新たな若木が立っている。
長い時の中ではそういう場面にも何度か出会うこともあるのじゃよ」
いくつかの変化を待って、それを知っても何を感じる事ができるだろう?
生きる意味を求めるなら、秋の森にいる事はできないだろう。
さて、生きる意味とは何だろう?
揮宇はそれを求めているのかな?
揮宇はただ仙人の話に頷いて、また来る夕闇に目を閉じ考えた。
ただ生きているだけの事はできない気がしてきていた。
葉に包まり、眠り、日はまた翌日へ。
朝日に目覚め、葉を払って、体を起こし、キノコ探して歩き彷徨う。
また葉を蹴散らし、赤や黄を集めて、厭きたら、やがてただ眺める。
仙人と話して、考えて、何かを求めて、辺りを窺う。
何も変わらず、また日が暮れてゆく。
ああ、想像せずに道作らぬ者、人にあらずかな。生き地獄。
この世の終りし場所で生きる者なり。