秋の森 6.キノコの話
ここは地獄の一丁目か、はたまた天国の入口か、
揮宇(きう)にはそれがわからないが、いずれにしても生きた心地はしない。
服は汚れない。
体は汚れない。
靴は汚れない。
毎日寝たら、次の日には前の人同じ自分が葉に埋もれて蘇える。
ああ、ここはどこ?と揮宇は自分の居場所を毎朝見つめ直す。
仙人は小枝を集めて作った小さな小屋を持っている。
この世界で家は特に必要はないのだが、住み家があると自分の居場所を感じるそうだ。
揮宇には家もない。何もない。最初のままだ。
でもそれが普通だ。
始めの人もそうだった。
あの年上のユニセックスな方も家なんて持っていなかった。
今ではどこをどう行けばあの人に会えるかわからなくなってしまったので、
確証は持てない。聞いてみないとわからない事もある。
でも全てが無意味なのだ。
仙人は小枝を集めに出掛けていった。
あの人の趣味の一つでもある。
仙人は何を考えているかわからない。
時々頭がおかしくなったように大声を上げる事もある。
「自由だからいいんじゃよ」と最後に叫んでいた。
確かに個の世界、何でもありだ。
映画でも演劇でもなければ誰も見ていない。
自由なのさ。
自由のままに。
やりたいようにやればいい。
夢の中で意識を持っているようなものだ。
時間は勝手に流れている。
さもなくば流れすぎていっている。
だから揮宇は何もないまま、年老いてゆく。
自分の顔さえ見れないのだから、どれだけ年老いたかもわからない。
手のシワを見ても年老いた気はしないね。
腹が減ったらキノコを食べる。
これらは木の幹の根元に生えている。
落ち葉をほじくればどこかにある。
軽いゲーム感覚でキノコを探す。
調理をしていないキノコを食べるのに、最初は気が引けたが、食べれば、香ばしく、歯ごたえもあっておいしい。
味は上々だ。
だから揮宇はスーパーマリオのようにキノコを食べた。
別におっきくもならないし、ちっちゃくもならない。
もちろん1UPもしないけど、キノコを探し、それをむしゃくしゃ食べた。
それくらいしか、秋の森での楽しみはなかった。
右の木の幹の下にキノコ発見。
あの大きな木の下にもあるかな。
探り探り、木の葉の集落を掘り起こす。
白くて大きなキノコがたくさん顔を出す。
お宝探しゲーム。
こいつは量が多すぎだ。
明日にとっておこうか、おくまいか。
赤い落ち葉を集めて目印とする。
あの木の下はどうだろう。
ないかあるか、落ち葉を掻き漁る。
ハズレもあって、アタリもある。
だからキノコ探しはおもしろい。
探しに、探しておいしく食べよう。
もうお腹はいっぱいだ。
単純ゲームに毎日耽る。
この世の終ったような場所で揮宇は時を送る。
どれだけ日が過ぎても冬はやってはこなかった。
秋の森は今日も秋を繰り返す。