3. ナンパ | 小説と未来

3. ナンパ

  

 拳銃を受け取ってから、数日が経つ。


 それでも響(ひびき)の環境は何も変わらない。


 落ち着かない響は、「ふくちゃん」の常連客の一人、式羽(しきば)に会いに行った。式羽は「MAKE LOVE 1 HOLE」(フィクションである)という風俗店を経営している。


 昼の14時、MAKE LOVE 1 HOLE に行くと式羽は事務所にいた。事務所と言っても、会員専用のショットバーとなっている部屋だ。式羽はそこでマティーニをちびちび飲んでいた。


式羽:「あれ、ひびきちゃんじゃんか。どうしたの?」


響 :「いや」


式羽:「何だ。例のごとく、ビンビンて感じ?」


響は否定しない。


 そんな会話を経て、二人は渋谷のスクランブル交差点に出掛ける

 そして、109近くにたむろする女に声を掛ける

 声を掛けるのは、式羽の役目だ。


式羽:「ねえ、ねえ、飯喰いいかない?」


 女は二人組、いわゆるギャル系である。最初はなあにおじさんというような目で式羽を見ている。


 やがて式羽は手口2を使う。


式羽:「俺の友達が君の事が気になって仕方ないっていうんだよ。

    シャイな奴でよお、俺もこんな事したくないんだけどさ。付き合ってやってよ」


 金髪の女はどうでもいいように、それでも式羽の目線の先をちら見する。

そこにはすらっと背の高い響が立っている。まんざらでもない顔をする


「知り合いなの?」

「ああ、もちろん。ていうか、友達、おい、響、こっちこいよ」


 そして響は近寄ってくる。

 すらりと背の高い男は二人のギャルの前にすらりと立つ。式羽にふり掛けられた甘い香りの香水が女の鼻をくすぐる。

 響は何も話さない。


「よう、いいだろ。飯はおごるからさあ、いい店知ってんだよ」

「何、どこ?」と、もう一人の赤毛の女が話に乗ってくる。

「ああ、まあ、フレンチ風のアレンジ料理なのね。普通、予約とか要るんだけどさあ、まあ、俺は顔パスでねえ」

「ほんと、おごり?」

「ああ、もちろん」

「どうする?」と、もう金髪に訊ねる。

「ごはんだけなら、いいけど」

おし、決まりね!」


 そんなわけで、4人はある店へと向かう。

 その店は恵比寿から白金に続く方の道を歩いて、10分程度行った所にある。静かなダイニングバーで弱い黄色の光が観葉植物を照らし、落ち着いた雰囲気をかもし出している感じのいい店だ。

 式羽の言うようにそこは顔パスだ。

「ああどうも」と主人が言って、入ってゆく。

 まだ時間は17時だ。


 飯を平らげ、ワインを呷(あお)って、そんなこんなはお手のもの、気がつけば、女たちはホテルへと連れ込まれていた。


 金髪の女を抱きながら、響は気持ちを吐き出す。異様なほどに激しく、体を動かす。女はその勢いにたまらなく興奮している。


 恐れている部分がある事を、響は気づいている。

 いつでも引き金を引きたい想いが気持ちを落ち着かせない。今はこんな事でしか気を紛らわせない。

 明日の朝、部屋に帰れば、留守番電話にあの男の指示が入っているかもしれない。殺したい感情と人殺しをする恐れが響の感情を混乱させていた。

 あえぐ女の声を聞きながら、感情の全てをその女にぶつけてしまうことでくらいしか、今を落ち着けることができずにいた。


 時はまだ来ない。そしてこんな一日もあるのだと、自分に言い聞かせている。


第4話へ続く。