昭和の作詞家(82)千家和也 | 昭和歌謡

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懐かしい昭和の歌謡スターの歌を紹介します。

◎女の子のいちばん大切なもの

 千家和也(昭和21年~平成31年)はアイドル歌謡からド演歌、さらにはアニメ主題歌まで多くのヒット曲を作詞、その幅の広さに驚かされる。

 千葉県市原市の生まれ、私立市川高校から早大教育学部に進むが中退して作詞家なかにし礼に師事して作詞家になる。

 まずはアイドル歌手の歌から。

  「ひと夏の経験」(昭和49年・都倉俊一作曲・山口百恵歌)〽あなたに 女の子のいちばん 大切なものを あげるわ 小さな胸の 奥にしまった 大切なものを あげるわ

 詞をもらった都倉が「おいおい、まじかよ」と思ったほどきわどい歌詞で話題を呼んだ。千家は百恵のデビュー作「としごろ」(48年)から第15作の「赤い衝撃」(51年)まで15曲のうち14曲を作詞している。うち8曲が都倉とのコンビで、いずれも青春もの。残る1曲が阿木燿子・宇崎竜童コンビの「横須賀ストーリー」(51年)で、百恵はツッパリものとでもいうべきこの曲で新境地を開いた。以後は阿木・宇崎コンビの曲や、さだまさしの「秋桜」、谷村新司の「いい日旅立ち」などを歌っていく。

 「わたしの彼は左きき」(48年・筒美京平・麻丘めぐみ)〽小さくなげキッスするときもするときも いつでもいつでも彼は左きき

 「年下の男の子」(50年・樋口雄右・キャンディーズ)〽真赤なリンゴをほおばる ネイビーブルーのTシャツ あいつはあいつはかわいい 年下の男の子

 2曲とも思春期の少女の微笑ましい気持ちが感じられるいい歌だ。次は歌謡曲…

 「終着駅」(46年・浜圭介・奥村チヨ)〽落葉の舞い散る 停車場は 悲しい女の吹きだまり だから今日もひとり 明日もひとり 涙を捨てにくる

 「そして、神戸」(47年・浜圭介・内山田洋とクールファイブ)〽神戸 泣いてどうなるのか 捨てられた我身が みじめになるだけ

 「バス・ストップ」(同・葵まさひこ・平浩二)〽バスを待つ間に 泪を拭くは 知ってる誰かに 見られたら あなたが傷つく

 「雨」(同・浜圭介・三善英史)〽雨に濡れながら 立たずむ女がいる 傘の花が咲く 土曜の昼下がり    

 いずれも心に残る曲で、各歌手の代表曲となっている。「終着駅」は千家の最初のヒット曲。失意の女が終着駅から降りてくる情景が浮かぶような傑作だ。最後に演歌…

 「なみだの操」(48年・彩木雅夫・殿さまキングス)〽あなたのために 守り通した女の操 今さら他人に ささげられますか あなたの決してお邪魔は しないから おそばに置いてほしいのよ お別れするより死にたいわ 女だから

 クサい歌詞を宮路オサムがクサく歌って200万枚の大ヒットした。人気漫画「ちびまる子ちゃん」の中でまる子がさかんに歌っていたように老若男女に愛された。二匹目のどじょうを狙った「夫婦鏡」(49年)も当たった。

 「あなたにあげる」(49年・三木たかし・西川峰子)〽あなたにあげる 私をあげる あゝあなたの 私になりたいの 

 ぴんからトリオの「女のみち」(47年)もそうだが、このころ「女の操」をテーマにした歌がヒットしたのはどういうわけなのだろうか。すでに死語になってしまった「操」を懐かしむ気持ちからだろうか。                            (黒頭巾)