「綺麗で……あったかい青だ。」
……
……おちる。
…………おちた。
………………おちていた。
恐ろしく寒い、
………………真っ暗で、
…………真っ黒な、
……深い、
闇の中を。
ココデ、
タシカメル…・…
?
何をだ?
……そうだ。
~ワケ~ を……
ナナが、この世からいなくなった。
~理由~ を。
だから……
だから…………
「マルハチ!まだ生きてる~?」
ボンヤリした意識をわずかながら刺激する声。
イチゴだ。
そのノンキな通信音声では、意識をわずかしか刺激しない。
真っ暗な真空の星々の間から、お互い体ひとつで急降下しているというのに。
この落下が始まるまでの、意識が遠のいていく様な、闇の深さと、
全ての気力を奪い去る、意識を失う寸前にまで追い込む寒さ。
だから、やっと、たどり着いた目的の第四惑星の……
マバユイばかりの「青い大地」と「暖かさに」ホウケタのだ。
…………ホウケる?惚ける?惚けている場合ではないことに「マルハチ」は気づいた。
「イチゴ。状況は?!」
「09、0B、0F、11、17の5名は出発前に辞退」
「ビビってやめたか。後は?…………詳細はいい。
今【何人】一緒に落下してる?」
15は、少し口ごもってから…………応えた。
「私と08、君だけだよー。
あとは、この惑星の自動防衛システムで撃墜されちった~」
08は慌てて、機体前部に固定されたアタマで唯一動く目を動かしてみる。
眼前に広がる青い光景の中に、形を保って存在するのは…………
15の「オタマジャクシ」だけだった。
オタマジャクシ……という愛称で呼ばれたそれは、
惑星大気圏にスムーズに突入するための流線形ボディに、
生命維持装置をそなえた安心のゆりかごだ。
我ら、司令船から射出された生身の体のヒトを、
かろうじて守ってくれる個人用脱出カプセルを、
目的惑星への”不法侵入”用に「悪用」しているわけだ。
楕円形のタマゴ型に垂直尾翼のしっぽが生えている。
侵入目標の惑星住人に探知されづらくする為、
黒い無反射のステルス塗装も施されている。
技術の粋を尽くしたゆりかごは、
今回の第四惑星潜入作戦に志願した16名を、
無事に目的の惑星大地に軟着陸させる機能を持っていた。
…………が、持っている事と、
その機能が100%発揮できるか?
……ということは、実は、別問題である。
すでに、オタマジャクシは二匹のみ。
ここにすむ住人達の「母星」に到達するのは……
想像以上に競争率の高い事だったらしい。
「私達二人だけで、ここで産まれる事になるねー。どう?双子って設定で?」
パァリィィヤァァァン!
外周聴覚モニタが異音を拾った。
地表が近づき、対地近接センサーによって、
オタマジャクシの外殻が自動剥離し始めた様だ。
がぜん忙しくなった08……&H4008号は、
&H4015号のノンキな言葉に適当に応える。
「……にてない」
即座に、抗議の声が上がる。
「こ、こんな不安な状況なんだから、そこは優しくそうだねと……
ッキーーーー!……
右前方に火球が生まれたと同時に、激しい ビープノイズ が入る。
撃墜された。
第四惑星からの対空砲撃によって。
&H4015号が。
……突然眼前が開かれた。
オタマジャクシがついに「割れ始めた」のだ!
「マコト!今から貴様をそう呼称する。&H4008号」
作戦隊長にして直属の上司の「ジルフ」が、
緊迫した状況を無視したかの様に、まくしたてた。
安全な司令船から好きな事をいうなよ…と、マコトはイラつく。
「マコト、130秒後には君は、めでたくこの惑星の住人になる。
ついては、[苗字]を選べ、
使用可能なのは、ウラシマ、ハセクラ、カシワ、タドコロ……」
状況を全く考慮しない冗長な問いかけにマコトは苛ついて怒鳴る。
「一番上でいいです。着陸手順を早く!」
「了解した。
オタマジャクシ分解時に、
少しでも貴様を減速させるために、
上方へ跳躍させる。
音速で着地するのは嫌だろう?
いいか?、『跳ぶのだ。』60秒後だ」
マコトは60秒という思いもよらない休暇に、
まず、自分の手足が、まだちゃんとついてることを確認する。
よかった。いつの間にか左右逆についたりは、してないらしい。
……そして、
……そして、30秒だけ「イチゴ」の事を想う。
(あいつは、一人じゃ寝れないって言ってたなあ。
大丈夫かな?)
マコトは自分でも、つまらない事しか思い出せない事に焦り、
必死に記憶をたどる。
……まただ、
また、一人友達を失った。
実感など、まだわかないよ。
ジルフが割り込む。
「よし、12秒前、先ほど決定した地球名を名乗った後、実行せよ。
08、
07…」
07と聞いて、思い出した。
ナゼ?この暗闇を超えて、この、
『憎むべき地』に、落ちゆくのか?。
……そうだ、大事な
私の欠けた、もう半分の身体。
07…
ナナが…
04、
ナゼ?
03、
コノ、ワクセイ、デ
02、
シンダ……のか!
01、
つきとめる!!
パァアン!
爆発的な加速度が、身体を引きちぎろうとする
細かい破片が、飛び散り加速し、まばゆい、粒子となる。
ひとつ、ひとつ、を、
凝視しながら、両足を『宇宙へ』伸ばし…・・・
両手を『大地』を掴むように
引き伸ばした!!
「ウラシマ マコト跳ぶ!!」
「浦島誠跳ぶ!」
第0話「あったかい青」
~続く~
