ジョーさんは普段からメールや電話がマメなほうではない。
最初はそれを寂しく感じたりもしたが、この頃にはさほど気にならなくなっていた。
なのに、この日の朝のメールはおかしなことが書いてあった。
今日一日、電話を取らず、メールも返さないで。
夜に変なこと留守電に吹き込むけど気にしないで。
昨夜の私のメールには一言も触れてない上、理解できないことが書いてある。
わけは後で話すとあったが、このメールの趣旨がまったく分からない。
そもそも、余程のことがなければ電話もメールも寄越さないひとだ。
今日一日、ジョーさんが電話をしなければいいだけのこと。
このメールにも返信はいらないと書いてある。
よく分からないが、とりあえずこの不可解なメールへの返信はしなかった。
電話をかけることもしなかった。
ジョーさんがわけは話すというなら、待つだけだ。
待つだけだが、やけに胸騒ぎがする。
ジョーさんは私に何かを隠している。
それは分かった。
何を隠しているのか?
私が電話に出てはいけない状況はなんだろう?
私以外に女がいる。
それしか浮かんでこなかった。
この日は仕事も上の空だった。
胸がザワついて、それどころじゃない。
仕事が終わっても、ひとりでいるのが怖かった。
留守電になにを吹き込まれるのか考えると、眠るのも怖い。
ジョーさんと再会した6月から他の男性とは会わなくなったが、
この夜はタカシくんと遊ぶ約束をした。
ジョーさんに会えなかった数ヶ月の間に知り合った2つ年下の男の子だ。
お互い、下の名前しか知らない。
タカシくんが住む街までは電車で一時間かかる。
だけど、自宅に帰るよりずっと良かった。
この日の私には、ジョーさんを信じて待つだけの余裕がなさすぎた。
23時ごろ、電車を降りたタイミングでジョーさんから着信が入った。
言われた通りに電話は取らなかった。
数十秒ほどで留守電への録音は終わった。
留守電を聞くのは怖い。
怖いが、気になる。
気になりすぎて、それも怖い。
私は留守電のメッセージを再生した。
泣いたことを気付かれないように、タカシくんの車に乗った。
二人で朝まで過ごした。
もちろん、えっちも込みだ。
留守電にはジョーさんの声が吹き込まれていた。
「嫁さんと子供がいるから、連絡しないでください。それから…」
メッセージの最後は、聞き取れなかった。
聴覚がおかしくなった。
8月も、あと十日ほどで終わる。