政治改革 政規法改正、公明党の闘い
自公協議
一貫した主張、首相動かす/第三者機関の設置、決断導く

2024/06/25 1面
 自民党派閥の政治資金問題を受けた改正政治資金規正法が、19日成立した。先の通常国会で公明党は、国民の信頼を取り戻す第一歩とするため、改正法の実現に総力を挙げて取り組んだ。連載の初回は、その奮闘を追った。(文中敬称略)


 5月30日午前、公明党本部4階。党代表の山口那津男は中央幹事会の冒頭、まなじりを決して切り出した。「自民党の修正案は、そのまま賛同することはできない」

 自民党が前日に提示した修正案には、公明党が一貫して訴えてきた改革案が反映されていなかった。国民の政治不信が高まる中、この修正案では国民は到底、納得できない――。山口は政治改革への断固たる決意を込めて言い切った。

 今回の問題を重く見た公明党は1月18日、他党に先駆けて「政治改革ビジョン」を発表。政治家の責任・罰則強化に加え、政治資金パーティー券購入者の公開基準額を「5万円超」に引き下げることや、議員が政党から受け取る「政策活動費」の使途公開など政治資金の透明性を高める再発防止策を打ち出した。

 通常国会が始まり、衆参両院の政治倫理審査会で関係議員の弁明が行われた後、まず動いたのが公明党幹事長の石井啓一だ。自民党幹事長の茂木敏充と4月16日に会談し、自公協議で与党案を早期に取りまとめる方針を確認した。

 ただ、いくら待っても自公協議で自民党から具体案が示される気配はない。石井は19日午前、実務者に具体策を出すよう自民党側に伝えるよう要請。これに慌てた自民党は、23日に自民党案を公表した。

 そこには、公明党が提案していた政治家の罰則強化などは盛り込まれていたが、肝心のパーティー券購入者の公開基準額引き下げや、政策活動費の使途公開は「検討項目」とされていた。

 「公明党の案はどうしても受け入れられない」と繰り返す自民党。国会での審議を考えると、残された時間は少ない。石井は今後の与野党協議の場で野党の意見も聞き入れながら公明案を実現させようと、一部課題を残したまま自民党と大筋合意することを決断。5月9日、取りまとめ文書にサインした。

 17日、自民党は改正案を衆院に単独提出。委員会で質疑を一通り終え、与野党は28日、修正協議へ。公明党などの修正要求を受け翌29日、自民党は修正案を示した。

 ここにきて一部のマスコミは「公明賛成へ」と一斉に報道。だが公明党内には自民修正案を容認する意見は一切なかった。公明党の実務者として自民党との交渉に当たった中川康洋らは「まだ闘いは終わったわけではない」と決めていた。

■パーティー券の公開「5万円超」で決着

 そして30日。山口は自民修正案に賛同できないと断言。その夜、山口に首相官邸から「あす午前、自公党首会談を行いたい」と連絡が入った。翌31日、党首会談が行われ、席上、首相の岸田文雄は、パーティー券購入者の公開基準額について「『5万円超』に修正したい」と表明。政策活動費をチェックする第三者機関を設置すると英断した。

■「公明案丸のみ」との報道も/通常国会での成立に道筋

 これを翌6月1日付の各紙は「首相、公明案丸のみ」(朝日)などと大々的に報道。「今国会中の法改正に道筋を付けた」(毎日)ことで、19日、最終的に公明党の主張を全面的に反映した改正法が成立した。

 成立後、山口は国会内で記者団に、力を込めて語った。「改正政規法を政治への信頼回復の第一歩として実行し、国民に見てもらうことが重要だ。不断の改革を一歩一歩着実に進めていく」


▼2面に『読者の質問にお答えします』改正政治資金規正法Q&A

 

 

読者の質問にお答えします
改正政治資金規正法 Q&A
2024/06/25 2面


 23日に閉幕した第213通常国会では、自民党派閥の政治資金問題の再発防止に向け、改正政治資金規正法が成立しました。改正法を巡り読者から寄せられた質問について、公明党の考え方をQ&Aでまとめました。


■Q パーティーや企業・団体献金は禁止しないの?

■A 再発防止で重要なのは、議員の責任強化と政治資金の透明性向上。民主党政権でできなかった改革を実現しました。

 改正法の目的は、自民党派閥の政治資金問題の再発防止です。不正に対する抑止力を高めるとともに、政治資金の透明性を向上させ、二度と同じような問題を起こさせないことが重要です。

 改正法には、会計責任者だけでなく議員本人も責任を負う、いわゆる「連座制」の強化が盛り込まれました。これは公明党が2009年に提出した法案と同趣旨のもの。当時、与党第1党だった民主党などがなかなか審議に応じず、廃案になりましたが、今回、民主党政権でできなかった改革が15年を経て実現しました。

 政治資金の透明性確保では、パーティー券購入者の公開基準額を「5万円超」に引き下げるとともに、支払いを原則、口座振り込みに限定。収支報告書のオンライン提出の義務付けなどの改革も前進しました。

 国会審議では参考人の識者から「規制強化も必要だが、政治資金の透明化に何よりも力を注いでほしい」といった意見がありました。

 企業・団体献金の廃止に関しては、お金のかからない政治のあり方を幅広く検討する中で模索すべきテーマです。

■Q 「第三者機関」は、本当に実現するの?

■A 今回の法改正は、改革の第一歩。第三者機関は、設置することが決まり、党PTで制度設計を進めます。

 今回の法改正は、政治改革の“第一歩”です。付則に盛り込まれたものも含め、公明党は、改正法に盛り込まれた具体策を着実に実施していくためのプロジェクトチーム(PT)を設置し、「真に実効性の高い法律に仕上げていく」(石井啓一幹事長)方針です。

 中でも詳細を詰めなければならないのは、政治資金に関する独立性を確保した「第三者機関」です。公明党が提案し、実現を粘り強く訴えたことで、岸田文雄首相から「政策活動費をチェックする第三者機関を設置する」との決断を引き出し、法律に「設置する」と明記されました。

 設置時期についても、国会審議の中で、公明議員の質問に答える形で、岸田首相が「(施行日の)2026年1月1日を念頭に」と明確に答弁しました。

 公明党は、同PTで第三者機関のあり方を含めて精力的に議論し、詳細な制度設計を進めていきます。

■Q 「10年後に政策活動費の領収書公開」は意味あるの?

■A 自民と維新の間で合意したこと。第三者機関で毎年、厳しくチェックする方が効果的です。

 議員が政党から受け取る「政策活動費」について、「10年後に領収書などを公開する」とした案は、自民党と日本維新の会の間で合意したもので、公明党は全く関与していません。

 政策活動費について、公明党は、これまで一切支給していませんが、使い道が明らかにされていないため“ブラックボックス”になっていると考え、使途公開の必要性を訴え続けました。その結果、政策活動費を「どのような目的で、いつ、いくら使ったか」が分かるように、受け取った議員が「項目別の金額」と「年月」を報告し、政党の収支報告書に記載することになりました。

 政策活動費のチェックについては、10年後に公開された領収書を見るよりも、第三者機関が毎年、厳しくチェックしていく方が効果的です。こうした考え方については、岸田首相も「収支報告書の記載内容の信頼性を確保する意味で、十分検討に値する有意義な意見だ」と述べています。

■Q 衆院で賛成した維新が、参院で反対に回ったのは?

■A 維新の迷走は不可解。法案の内容が変わっていないのに、同じ党で衆参の対応が分かれるのは異例です。

 日本維新の会は、衆院では改正案に賛成したにもかかわらず、参院での採決では反対に回りました。法案の内容は変わっていません。それなのに、同一の党で衆参の賛否が分かれるのは異例のことです。

 マスコミ各社からも「維新 対自民で混迷」(19日付「毎日」)、「衆院と参院で賛否が異なった日本維新の会の迷走ぶりが際立った」(21日付「日経」)などと厳しい見方が示されました。

 維新はさらに、首相への問責決議案を提出しましたが、他党が同調することはなく、不発に終わりました。維新のちぐはぐで一貫性のない対応には、野党からも疑問の声が上がりました。