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生活道路、最高速度30キロに
歩行者らの安全確保へ

2024/06/16 3面


■現行60キロから引き下げ/26年秋実施、一般道の7割が対象

 警察庁は5月30日、住宅地や商業地で日常的に利用されている生活道路を対象に、車の最高速度(法定速度)を時速30キロに引き下げる改正案を発表した【下のイメージ図参照】。歩行者や走行する自転車の安全対策を強化するのが狙い。今後、道路交通法施行令を改正し、運転手への周知を進め2026年9月からの実施をめざしている。主な変更点のポイントや背景、公明党の取り組みなどを解説する。


 現在の道交法施行令では、生活道路を含む一般道の法定速度を時速60キロと定めている。今回の改正案では、事故の抑止に向け、センターラインなどのない生活道路について法定速度を時速30キロに引き下げる。

 生活道路は、全国に約122万キロメートルある一般道のうち、約87万キロメートルで全体の約7割を占めている。

 一方、「40キロ」や「50キロ」など速度規制の標識がある道路では、これまで通り、標識の速度を法定速度とする。

 改正案について警察庁は、今月29日までパブリックコメント(意見公募)を受け付け、7月下旬に改正施行令を公布する方針を示している。運転手らの理解や周知を促すため、施行までに2年以上の期間を設けた。

 一般道に「60キロ」と「30キロ」の二つの法定速度を併存させるのは初めての試み。改正が実現すれば、運転手はセンターラインの有無などで、法定速度を判断していく。

 警察庁は生活道路に進入する自動車のスピードを緩和することで、人身事故の防止につなげたい考えだ。

■事故抑止と被害の軽減に期待

 生活道路では人と車の衝突事故が後を絶たない。自治体が個別に対応している標識の設置や速度規制などの安全対策も追い付いていないのが現状だ。

 警察庁によると、23年の交通事故件数は30万7930件で10年前と比べて半減している。ただ生活道路のような狭い道路で発生した事故の死傷者のうち、歩行者と自転車走行の人の割合は、道幅5・5メートル以上の道路に比べ約1・8倍高い。

 歩道と車道がはっきり分かれていない生活道路では、歩行者や自転車が自動車事故に巻き込まれやすいと言われている。

 対策に向けた標識の設置は財政負担を伴い、個別の速度規制についても申請手続きや審査に時間を要するため、警察庁は今回、ルールを抜本的に見直し、生活道路の法定速度を引き下げることにした。

 法定速度を時速30キロにするのは、衝突事故で自動車が30キロを超えていると歩行者が致命傷を負うケースが多いためだ。

 警察庁が05~09年に起きた歩行者と自動車の衝突事故を分析した結果、自動車が時速30キロを超えたケースで被害を受けた歩行者の死に至る割合(致死率)は急激に高まる【グラフ参照】。

 そこで事故抑止や被害の軽減に向けて警察庁の有識者検討会が生活道路の法定速度を時速30キロ以下にするよう提言するなど、対策の強化が求められていた。

■公明、安全対策を強力に推進

 歩行者や自転車を走行する人の安全確保へ、公明党は生活道路での事故防止策を強力に推進。06年に埼玉県川口市の生活道路で、保育園児らの列に脇見運転の車が時速50~55キロで突っ込み21人が死傷した事故が起きたことなどを受け、生活道路の速度規制強化を政府に強く訴えてきた。

 政府は、特定エリア内の速度を時速30キロ以下に規制する「ゾーン30」の取り組みを全国に広げるなど、対策を強化。今回の法定速度を時速30キロに引き下げる警察庁改正案も、公明党が後押しした。

 また公明党は、危険な通学路を含む生活道路の歩道整備やガードレール設置など、ハード対策も政府に強く求め、その結果、全国の整備状況が9割を超えるなど安全対策が着実に前進している。

 さらに各地の公明党地方議員は住民の声を踏まえ、標識の設置や速度規制などを実現。時速30キロ規制のほか、道路に段差などを設けて安全運転を促す「ゾーン30プラス」を徳島市で導入させるなど、安心して通行できる生活道路づくりに全力で取り組んでいる。