自転車保険の選び方
個人賠償は3億円か無制限を推奨

2024/06/16 6面
 自転車は誰もが手軽に利用できる乗り物ですが、万が一に備え、自転車保険の加入は必須です。全国で義務化が広がっています。上手な選び方について、ファイナンシャルプランナーの氏家祥美さんに解説してもらいました。


 誰もが、自転車事故の加害者になる可能性があります。2013年の神戸地裁では、62歳の歩行者が小学生の乗る自転車にぶつかって意識が戻らず、後遺障害を負った事故に対して、加害者の小学生に9521万円の損害賠償を命じています。

 その後、兵庫県が条例で自転車保険を義務化したことがきっかけとなり、全国32都府県で加入を義務化、10道県が努力義務としています(23年4月1日現在)。

 一般的に、自転車保険として販売されている保険は、他人へけがや損害を与えた場合の賠償費用を補償する「個人賠償責任保険」と、本人のけがや死亡を補償する「傷害保険」の組み合わせでできています。過去の自転車事故の判例に合わせ、個人賠償の補償限度額は1億円以上に設定されているものが多く、無制限のものもあります。

 そのほか、①事故を起こして動かなくなった自転車を、その場から移動するロードサービス②事故を起こした本人に代わって、後の交渉を代行する示談交渉サービス③自分が被害者となった場合の弁護士費用特約が付く保険――があります。

 自転車保険には、個人型や夫婦型、家族型などがあります。家族型の場合、加入者とその配偶者、同居の親族、別居中の未婚の子どもを含む家族が、その人数に関わらず補償されます。

 保険料は個人型の場合、安いものだと月額100円~500円程度です。家族型でも、月額500円~1000円程度で加入できるものが多数あります。賠償額を増やし、特約で補償やサービスを手厚くすると保険料が上がります。

 参考となるプランの例を紹介します。

 個人賠償責任保険は1億円以上は必要で、3億円や無制限だと安心です。傷害保険は、別の医療保険や傷害保険に入っている場合は不要です。示談交渉サービスや弁護士費用特約は付けましょう。ロードサービスもあれば安心ですが、必須ではありません。

■家族型に加入

 3人以上の家族がいる場合は、家族型がお勧めです。それぞれが個人型に加入するよりも、保険料が安くなることが多いためです。必要な補償内容と条件をそろえて保険料を試算し、候補となる保険会社を幾つかに絞りましょう。

■他契約との重複を確認

 ただ、必ずしも、こうした自転車保険に加入する必要はありません。

 自転車保険は、個人賠償責任保険と傷害保険の組み合わせですが、自治体が義務化しているのは、被害者への補償に備える個人賠償責任保険の部分です。

 お手持ちの自動車保険や火災保険、傷害保険、共済保険などに、個人賠償責任保険が基本補償や特約として入っていれば、事故による他人への補償はすでに備わっています。

 個人賠償責任保険は、家族で誰か一人加入をしていれば、基本的に家族全員が補償されます。人数分加入する必要はありません。補償が重複すると無駄になるので気を付けてください。

 自分や家族が安心して自転車に乗るためにも、万が一の自転車事故に備えて、補償を確認しておきましょう。

 すでに加入している損害保険に個人賠償責任保険が付加されていれば、保険証券などで補償の上限額が1億円以上あるか、欲しい特約は付いているかなど、補償範囲をチェックしてください。

 もし、補償が不足する場合には、自分だけなら個人型、家族がいる場合には家族型の自転車保険に加入しておくと、必要な補償を無駄なく備えられます。