教員の負担軽減へデジタル活用
2024/06/12 3面


 多忙な業務により長時間労働が問題となっている学校の教員。文部科学省が2022年度に行った調査では、中学校教諭の平日1日当たりの勤務時間(在校時間)が11時間1分と、長時間労働が続いている実情が浮き出た。そうした中、教員の負担軽減策の一つとしてICT(情報通信技術)を活用した業務のデジタル化を進める自治体が増えている。


■(岡山県)AIが採点をサポート

 生徒が記入した紙の解答用紙を複合機などでスキャン。そのデータと、事前登録した模範解答を人工知能(AI)が照合する。記号など1文字程度の解答であれば自動で採点。記述式の場合は、設問ごとに各生徒の解答が端末の画面上に一覧で表示され、そこに教員が○×△を付けていく。

 設問ごとの配点も事前登録しておくことで、各生徒の得点は自動で集計される。解答用紙の各解答に◯×△が付き、合計点を表示したものを、紙やデータで出力して生徒に返却する。

■作業時間が半分に、ミスも減少

 これは岡山県が23年度から全ての県立中学・高校で取り入れている「デジタル採点システム」の手順だ。採点・集計が端末上で済ませられる。県の担当者は「紙の採点で平均約8時間かかっていた定期考査1回の作業時間が約4時間へ半減している」と教師の負担軽減の効果を説明する。

 ミスの減少にもつながっているという。設問ごとに各生徒の解答が画面に並ぶため、見比べることができ、誤答に気付きやすく、基準がぶれにくい。自動採点に誤りがないかについても、最終的には教員が確認する。

 担当者は「採点時間を短縮できる分、生徒と接する時間が増えるなど、子どもにもメリットがある」と話す。

■北海道北広島市も公明の推進で導入

 北海道北広島市では今年度から、市議会公明党の推進でデジタル採点システムが市内全ての公立中学校で導入された。

 これにより、採点時間が約3割短縮されると見込まれており、教員の負担軽減に役立てられている。

■(熊本市)保護者との連絡をアプリで

 授業の担当や準備、学級通信や行事連絡の印刷と配布、欠席連絡の電話対応……。慌ただしい教員の業務の負担軽減に一役買うのが、学校と保護者の連絡アプリ「すぐーる」だ。

 熊本市は今年度から、このアプリを公立の幼稚園、小中学校、高校、特別支援学校全144校に導入。保護者にダウンロードしてもらい、一斉休校案内や学級通信、部活の練習日程の連絡などを配信している。

 保護者にとっても、欠席や遅刻の連絡がアプリ上ででき、忙しい朝に電話連絡しなくても済む。また、これまで紙で行われていた保護者アンケートや家庭訪問の日程調整なども、アプリで入力する方式にすることで、スムーズに集計・調整できるようになった。

 市担当者は「学級通信や行事の知らせなど、学校から保護者への配布物は毎日のようにあり、準備作業に多くの時間と労力を要していたが、モデル事業の検証ではアプリ導入で印刷・配布作業の時間約18分、朝に集中する電話対応にかかる時間約13分が短縮されている」と効果を強調。親世代のほとんどがスマホを持っているため、「導入もスムーズで、保護者、教員ともに大きな利便性向上につながっている」という。

■公明、働き方改革へ推進

 公明党は、教員の働き方改革に長年取り組んでいる。
 党文部科学部会(部会長=浮島智子衆院議員)などは政府に対し、ICTの活用による学校業務の効率化や部活動業務の軽減、教員をサポートする専門スタッフの増員などを強く求める要望を重ねてきた。

 先月10日には、同部会が盛山正仁文科相に対して、教員が担う必要のない業務の削減や教職員定数の改善などを求める緊急提言を行っていた。浮島部会長は「教員の働き方が改善されることで心にゆとりが生まれ、教育の質向上につながる。働きやすい環境整備へ、業務のデジタル化や処遇改善、学校の運営体制充実、多様な専門家で教育を支える『チーム学校』の構築などを全力で推し進める」と語る。
生徒の解答が一覧で表示されるデジタル採点システムの画面(岡山県教育委員会提供)