2024年4月24日、東京都多摩市を訪問し、「地域公共交通計画について」視察させていただいた。同市は、小金井市と比較して人口では約1.2倍、面積では約2倍であり、同じ三多摩エリアの自治体として比較しやすい。財政力指数は1.13と我が市より約0.13優秀で、経常収支比率は87.2%と同7ポイントほど柔軟性が高い(いずれも2022年度決算)。また、議会改革も進んでおり、決算審査から予算審査までを連動させた予算決算特別委員会をスタートさせており(2012年)、評価対象事業について議員間の議論に基づき意見集約を行い、「議会の評価」を確定して市長に示すという取組みをおこなっている。

そして、そもそもの多摩市の地形やまちの作りだが、小金井市とは大きく異なっている。我が市も国分寺崖線を境に高低差があって、地域を語るうえで必ず触れられる課題だが、多摩市の場合はエリアそのものが丘陵地帯で高低差がはるかに壮大かつ複雑な上、多摩ニュータウン地域では集合住宅の地面と幹線道路との高低差も加わって、さらに複雑化している。
視察当日は、こうしたことを前提に担当部の方からご説明をうかがった。

 

 

多摩市交通マスタープランでは、含まれる目標の一つ「多摩市のまちづくりを支える市内公共交通網の再構築」を達成するための事業計画として、「市内公共交通網の再編と交通不便地域の解消」をあげている。多摩市の地域公共交通再編実施計画は、上記(課題の解消)を進めるための計画である。

同計画では、市内のバス路線を「幹線」及び「支線(地域密着型交通)」に再編するものとし、支線に関わる実証実験を実施して、その本格運行への移行の是非を判断するものとしていた。しかし、実証実験直前にコロナ禍となってしまい、過度の利用者減になってしまったことから実施されなかった経緯がある。アフターコロナの時代を迎えた現在は、同計画の見直しをめざして関係機関と調整をおこなっている模様だ。

 

今回の視察をとおして印象に残った点の一つに、多摩市が交通政策とまちづくりとの一体感のある政策を考えていることがある。

ご説明のなかで、「公共交通をデザインするということは、すなわち、まちづくりだと考えている」「ただ、公共交通が充実していればよいというものではなく、こういったまちにしていくという具体的な戦略とセットで考える必要があると考えている。非常に難しいことではあるが、結果に責任をもつということだ」とあった。

交通政策という変動要素の多い対象を相手にしながらも、市全体のまちづくりを進めるために、しっかりと腹を決めて取り組んでいる様子がうかがえて、感銘を受けた。