2024年4月19日、長野県飯田市を訪問した。視察項目は、「地域環境権と地域公共再生可能エネルギー活用事業について」&「環境モデル都市の取組みについて」の二つである。

 

飯田市は小金井市と比較して、面積で60倍、人口は8割程度の規模…、諸条件は異なるが、環境モデル都市として有名な都市である。同時に、我が市と災害時相互応援に関する協定を結んだ(2012年)大変ご縁のある自治体でもある。

 

 

【環境モデル都市の取組みについて】

 

冒頭、飯田の地域の特性として「お互いが助け合って何かを成し遂げる精神(結の精神)」をもっていると教えていただき、環境文化都市宣言の説明へと続いた。市民一人一人の環境に配慮する日常の活動を、環境を優先する段階へと発展させながら、新たな価値観や文化の創造へと高めていく…という取り組みだ。環境文化は「環境も文化も」ではなく、「環境への取組みが文化の一部になっていく」という意味とのこと。単なる環境戦略ではなく、地に足を着けて取り組む意思がはっきりと伝わってきた。なんといってもここは強みだ。

同市は、内閣府が環境モデル都市として最初に指定した13自治体の一つ。前述の環境文化都市宣言が最上位の概念で「目的」なら、環境モデル都市は環境文化都市を実現するために地球温暖化対策に先駆的取り組みをおこなう意思表示であり「手段」といえる。

 

紹介された取り組みの一つに「うごくる。」がある。これは環境問題などについて「学び」「対話し」「具体的に行動」していく市民参加型組織のこと。小中学生から地域、企業も巻き込んで、はじめは小さくても確実にゼロカーボン達成へ向けて歯車を動かしていこうとするものだ。他の機関とも積極的に協働している。

なかでもカードゲームを使い、ファシリテーターの資格を持った職員が中心になってSDGs等の学習を進める取組みは大変興味深い。なお、取り組み名称の意味合いは、一人一人ができることから少しずつ「うごく」と素敵な未来が「くる」というもので、最後の「。」は決意のしるしとのこと。

 


【地域環境権と地域公共再生可能エネルギー活用事業について】

まず、地域環境権条例の考え方の基盤がきちんとできている。「飯田に生まれ、一生住み続けるに値するふるさとづくりが必要である」という発想がスタートラインにある。これは建築物でいうと基礎の部分だ。そして、自分の身近なことを、自分のこととして、自分で行うことの意義や喜びを見出せるような地域づくりを目指している。
条例化に向け、良好な住環境及び生活に不可欠なエネルギーの確保が、両立する必要があること、さらにそれが、地域住民のイニシアチブの下で、飯田にふさわしい形で、持続可能・環境調和的な方法により行われるべきだと確認されている。そしてその総体が市民の権利であり、同条例で保障されている。

地域公共再生可能エネルギー活用事業は、まさにその考え方を実行に移すもの。事例として説明のあった竜丘生涯学習センターの太陽光パネル設置事業はわかりやすかった。売電収入を使って、住民・事業者・行政が連携して地域課題の解決に取り組むもの。市のWEBサイトには、令和5年度の活動実績として竜丘を含め24もの事業の状況が紹介されている。


こうした取り組みは、地域が主体となるエネルギー自治を醸成するもので、合わせてゼロカーボンへの当事者意識を高めることにもつながっている。飯田市はベースとして備え持っている地域愛や地域力という強みを、環境政策に存分に発揮させている。実に素晴らしい。


▲会議終了後、議場を拝見させていただいたが、議長席を前から見ると大きく立派な「結(ゆい)/水引」が展示してあった。説明を読むと、これは飯田の地名の由来とのこと。「結(ゆい)田」から「飯田」へと変わってきたようだ。鎌倉時代の文献に、この地名が登場してくる。もともとは共同労働の田を意味する結田、そこから「人と人を結ぶ」意味合いを歴史的遺産として尊び、伝統として育んでいることに気づき、その美しい郷土愛にはジーンとくるものがあった。

 

▲飯田市役所の外観

前日、名鉄名古屋から高速バスに乗って移動。視察日の朝は眩しいほどの快晴のもと、飯田市で迎えた。気温もほどよく、からっとした風も時おり吹いて心地よい。昨今、同市周辺で太陽光発電が盛んな理由が分かるような気がした。