2024年4月18日、愛知県岡崎市を訪問した。視察項目は、脱炭素先行地域「どうする脱炭素?岡崎城下からはじまる、省エネ・創エネ・畜エネ・調エネのまちづくり」についてである。

市役所の周辺を歩くと、時々歴史を感じさせる和風建築を見かけるほか、通りの名称が「伝馬通り」だったり、沿道にあるお店の名前が「備前屋」だったりして、一瞬江戸時代にタイムスリップしたかのような感覚に包まれた。

ちなみに、大河ドラマ「どうする家康」の放映期間に合わせ、岡崎市役所には「どうする家康活用推進本部」が設置されていたとのこと。脱炭素先行地域としての取組みタイトルも「どうする」から始まっており、その、徳川家康の生誕地という特色を全面に押し出した勝負感は胸に響くものがあった。

 

同市は小金井市と比較して、面積で34倍、人口は3倍の規模であり、その意味で一段格上の公共団体といえる。市の経済は、第一次産業から第三次産業まで豊富な産業群に支えられており、実にうらやましい。経常収支比率は我が市より5ポイント以上柔軟性が高く、財政力指数も1.04と堅実な経営が見てとれる。

 

 

岡崎市は、2030年度(6年後)までに温室効果ガスを2013年度比50%削減するという高い目標を掲げ、2050年にはカーボンニュートラルを達成することとしている。また、環境省から選定された脱炭素先行地域では、2030年度までに電力消費に伴う温室効果ガス排出量を実質ゼロにするという大変難易度の高い事業を推進し、さらにその取組を市内全域へと広げていく方針をもっている。

脱炭素先行地域の取組みのスケールは壮大だ。全体像を非常に大まかに述べると「行政がリードして電力会社をつくり、生み出した再生エネルギーを集約・管理しながら当該地域の電力を賄っていくもの」と言えるだろう。当初はドイツにおける(公社制度に似た)シュタットベルケ手法を使うことも選択肢に入っていたようだが、現状は異なっているという。

 

事前の調査で、同市がSBT※(サイエンス・ベースド・ターゲッツ)の取得を目指す、または取得に向けた準備を進める事業者を対象とした支援業務を岡崎商工会議所との連携によって始めている点が気になり、質問させていただいた。ご説明によると、世界の今後の潮流は脱炭素経営になることから、企業における省エネの取組みを高めることが企業価値を高め、生き残りへと結びつくと確信して推奨しているとのこと。ただ、事業開始後3年目で、約14,000社中、未だ8社しか認定がとれていないようで、今後の進展に期待したい。

 

我が市が、同じ事業に取り組むことは規模的に無理があると考えるが、自治体として脱炭素化へ向けて挑戦する、その姿勢には大いに感銘を受けた。

 

 

※補足説明

SBT(Science Based Targets)とは温室効果ガスの削減目標であり、気象科学に基づき世界共通で設定されます。SBTにおいては各企業の取り組みが国際的な組織によって評価・認証されるため、参加企業にもさまざまなメリットが生じます。

ASUENE MEDIA より

 

▲岡崎市議会の議長席。議長席には「市歌」の歌詞がおいてあった。説明では、定例会などの議会の主要行事の際には皆で合唱するとのこと。年間では5回ほど市歌を合唱しているという。

 

▲L字型の岡崎市役所東庁舎。背後に福祉会館が位置している。