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新型コロナの飲み薬「ゾコーバ」を正式に承認

2024/03/17 3面

 

 厚生労働省は今月5日、新型コロナウイルス感染症の国産初の飲み薬「ゾコーバ」を通常承認した。ゾコーバについては、感染症の流行などの緊急時に限り、薬の安全性を確認した上で、有効性が「推定」できれば迅速に承認する「緊急承認」の制度を2022年11月に適用し、使用が可能になっていた。今回、通常承認に至り、その効果が正式に認められたことになる。

 

 

■臨床試験で症状の改善確認。安全性にも重大な懸念なし

 

 ゾコーバは、塩野義製薬が開発した新型コロナの経口治療薬で、ウイルスが体内で増殖するのを抑制する効果がある。12歳以上の患者を対象とし、1日目は1回3錠、2~5日目は1回1錠と5日間連続で計5回7錠の服用が求められている。

 

 発症から3日以内に飲み始めれば、▽せき▽喉の痛み▽鼻水・鼻づまり▽熱っぽさ・発熱▽倦怠感――といった症状が消えるまでの時間を約24時間短縮する効果があるとされる。

 

 ゾコーバは軽症・中等症向けの治療薬であり、若者など重症化リスクのない患者も服用できることに加え、副作用も少なく、使いやすいと評価されている。塩野義製薬によると、緊急承認以降、今年2月までに推定で100万人以上の患者がゾコーバを使用した。

 

 一方、緊急承認の時点でゾコーバの安全性は確認されていたが、有効性については推定にとどまっていたため、厚労省は、緊急承認から1年以内にゾコーバの有効性を確認できるデータを提出し、通常承認の取得に向けた手続きの申請を行うよう塩野義製薬に求めていた。

 

 これを受け、塩野義製薬は昨年6月、日本、韓国、ベトナムの3カ国で実施した臨床試験に基づくデータを厚労省に提出。この臨床試験は、重症化リスクの有無やワクチン接種の有無を問わず、幅広い軽症・中等症患者を対象に行われ、ゾコーバの服用による症状改善効果などが見られた。

 

 加えて、ゾコーバを使用した推定90万人以上の患者の安全性に関するデータも新たに提出した。

 

 厚労省は今月5日、塩野義製薬が提出したデータからゾコーバの有効性を確認でき、安全性についても重大な懸念はないとして通常承認した。緊急承認ではゾコーバを処方する際、有効性が推定であることについて文書で同意する必要があったが、今回の通常承認により、その同意が不要となる。

 

 一方、妊婦や妊娠の可能性のある女性はゾコーバを使用できないほか、高血圧の薬など併用できない薬があることに注意が必要だ。

 

 なお、ゾコーバなど高額な新型コロナの治療薬の費用についてはこれまで、公費負担により、自己負担額は最大で9000円までとなっていた。この公費負担が3月末に終了する。それ以降、ゾコーバが5日分処方される際の自己負担額は、所得に限らず3割負担となる6歳以上から70歳未満の人の場合、約1万5500円となる。

 

■後遺症抑制の効果へ期待

 

 ゾコーバは日本国内だけでなく、シンガポールでも昨年11月に輸入が許可され、同国内の一部の施設で使用できるようになっている。また、米国では、命を脅かす深刻な疾患に対する新薬などの開発を促進することを目的とした、食品医薬品局(FDA)の「ファストトラック」(迅速審査)の対象に、ゾコーバが指定されている。25年初頭には、米国でのゾコーバの販売が可能になると見込まれている。

 

 また、ゾコーバの服用により、体内のウイルス量が減ることで、新型コロナの後遺症と考えられる呼吸困難や集中力の低下といった症状も抑制できる可能性があるという。塩野義製薬は今月1日、大阪大学と共同研究講座を立ち上げ、2000人の患者を対象に、新型コロナの後遺症へのゾコーバの効果に関する臨床研究に乗り出している。

 

■公明党が実用化を強く推進

 

 公明党は、新型コロナの国産飲み薬の早期実用化に向けて、政府に提言を重ねてきた。この公明党の取り組みがゾコーバの緊急承認につながった。

 

 塩野義製薬の手代木功社長を招き、昨年2月に開かれた公明党新型コロナウイルス感染症ワクチン・治療薬開発推進プロジェクトチームの会合では、公明党の取り組みに対し、手代木社長が「心からの応援に厚く御礼を申し上げたい」と謝意を表明した。

ゾコーバについて塩野義製薬の手代木社長(奥右)から説明を受けた党PT=昨年2月3日 衆院第1議員会館