注目されるスマホアプリ
AEDの迅速な使用で命救う

2023/07/22 3面
 突然の心臓発作を起こした人に電気ショックを与えて救命するAED(自動体外式除細動器)。迅速な使用で命を救えるが、総務省消防庁によると、2021年に人前で倒れた患者にAEDが使われたのは、わずか4・1%(1096人)にとどまる。「いざという時、AEDがどこにあるか分からない」といった状況をなくしていくためにスマートフォン(スマホ)のアプリを用いる取り組みが注目されている。


■(team ASUKA)最寄り設置場所へ誘導/全国5.6万台が登録済み

 AEDを活用した救命の促進に取り組む公益財団法人「日本AED財団」が、昨年9月に発表した無料アプリが「救命サポーター『team ASUKA』」だ。

 このアプリは、スマホ端末の位置情報をオンにした上で使うと、公共施設やコンビニエンスストアなどに置かれた最寄りのAEDが地図上に表示される。駅などの施設名からも検索でき、現在地から設置場所までの道順を誘導してくれる。AED設置場所は、現在、全国で約5万6000台が登録されているという。

 アプリには、心臓マッサージを含む救命処置の方法を動画で学べる機能なども備わっている。

 同財団によると、同アプリのインストール数は約2万9000件に上る。利用者からは「『いつか、どこかの、だれか』の命を守る活動だと思って参加している」といった声が寄せられている。

 同財団は「救命には知識や技術だけでなく、いざというときに行動を起こしてくれる市民の存在が不可欠。アプリを活用して、こうした輪を広げたい」と期待を込める。

 なお、このアプリの名称は、11年にさいたま市の小学校で駅伝の練習中に心肺停止で倒れ、校内にあったAEDが使われないまま亡くなった桐田明日香さん(当時11歳)の名前から付けられた。同市は12年、この事故を教訓にAEDによる救命マニュアル「ASUKAモデル」を策定した

■(AED GO)ボランティアに通知/機器持って現場へ急行

 AEDをいち早く必要な人の元へ届けるため、無料アプリ「AED GO」を活用し、ボランティアに機器を運んでもらう取り組みも一部自治体で行われている。京都大学が民間企業と共同開発したシステムだ。

 このシステムでは、心停止の急病人が発生したとの、119番通報を受けた消防指令センターで、迅速なAED使用が必要と判断した場合、あらかじめスマホにアプリを入れて登録するボランティアに、付近のAEDの設置場所や患者の位置情報を通知。ボランティアは、その情報を基にAEDを入手し、倒れた人がいる現場に駆け付ける。なお、ボランティアに駆け付けの義務はなく、あくまでも任意だ。

 全国で初めて導入した愛知県尾張旭市では、コンビニにAEDを設置するなど、24時間、AEDを利用できる体制整備を進める中で、同大学と共同で、17年1月から実証実験を開始した。

 当初、ボランティアの応募対象は消防職員・団員だったが、同6月には市職員、翌18年からは市民全員まで拡大。現在436人が登録する。

 同市消防総務課は「実際に救命につながったケースはまだないが、少しでも救命の可能性を高めるため着実にボランティアを増やしたい」と話す。

■世界中で普及、日本も/京都大学大学院 石見拓教授

 AEDを使った救命処置は、未使用時と比べて、社会復帰率は4倍にも増加することが分かっている。日本のAED設置数は全国で約65万台(推計)と、今や世界有数の“AED大国”だ。

 しかし、設置場所を正確に示す十分な地図が少なく、心臓発作を起こした人を目撃しても、AEDの活用につながらないケースは多い。

 これらの課題を解決しようと、学校での救命教育の普及に加え、アプリ「team ASUKA」「AED GO」の開発を進めている。今後も市民の協力を得ながら、アプリ内のAEDのマップ登録を充実させたい。

 同様の取り組みは、世界中で広がっており、特にシンガポールでは、一般市民が行った心肺蘇生の3割は、スマホのシステムによって駆け付けた人によるものだ。日本でも普及すれば同じように多くの命を救えよう。

■公明のネットワークに期待

 一方、AEDの設置数に地域格差があることも課題だ。やはり、各地にあって多くが24時間営業のコンビニのような場所に置くのがベストだ。

 公明党は、AEDの設置に熱心だ。全国にネットワークを持つ公明党には、利用促進に向けた、さらなる尽力に期待したい。