地方議会に求められることは/早稲田大学名誉教授北川正恭氏に聞く(公明新聞記事) | 宮下まこと「こがねいで暮らす」

宮下まこと「こがねいで暮らす」

■「前」市議会議員/公明党
■脱炭素社会へ:市内街路灯(7千基)の一斉LED化
■子供応援:学校体育館にエアコン整備
■防災士:緊急地震速報の導入
■生活リズムアドバイザー:小金井さくら体操提案
■アーティスト応援:駅前ホール開設推進

 

識者に聞く「公明党地方議員に求められる役割と力」。

 

(土曜特集)地方議会に求められることは/早稲田大学名誉教授 北川正恭氏に聞く
2023年01月07日 4面


 2023年は、新型コロナウイルスが流行してから、初めて統一地方選挙が実施される。少子高齢化やデジタル化などが進む変化の時代において、地方議員に求められる役割や、政策立案力を高めるために必要なことなどについて、早稲田大学の北川正恭名誉教授に聞いた。

■(コロナ禍で変化)オンライン会議、導入加速

 ――地方議会に求められる役割は。

 北川正恭名誉教授 予算編成などの権限を持つ首長(知事や市区町村長)ら執行機関を住民の目線で監視する役割がまず挙げられる。その上で、住民を代表して意思決定を行う議決機関であり、議員提案で政策を実現できる立法機能も備えている。

 地方分権が進む中では、執行機関よりも議決権を持つ議会の影響力はますます高まっている。「少数意見の留保」といったことも念頭に慎重な審議に努め、民意を行政に反映する役割を果たしてもらいたい。また、地方議員においても、執行機関の単なる追認機関のような存在ではなく、議会にはもっと積極的な意味があることを自覚してほしい。

■民意反映する議決機関の責任果たす

 ――コロナ禍での変化は。

 北川 コロナ禍では、3密回避のため議員が議場に集まれない環境が生じた。こうした中、緊急を要する感染症対策の迅速な実施に向けて、議会の議決を経ずに予算編成などを首長が決定する「専決処分」が増えた。このため、議決機関の責任を果たそうとする議会の動きが出てきた。

 そこで、東日本大震災で議場が被災し議会が開けなくなったことを教訓に、BCP(事業継続計画)の一環として、議員が集まらなくても開催できるオンライン会議を導入する動きがコロナ禍で一気に全国に広がった。

 ただ、オンライン会議は地方自治法に定める「出席」に関して、“現に議場にいること”とする要件を満たさないのではないかとの課題が出てきた。それに対する国の動きは鈍かった。このため、複数の地方議会から国に対する働き掛けが重ねられた結果、地方議会の委員会の開催は規則改正などで認められた。地方議会が、国を動かした画期的な出来事がコロナ禍で起きたことを高く評価したい。

■(政策実現力向上へ)検証可能な公約が重要

 ――地方議員が政策実現力を向上させるには。

 北川 税収が伸びていた高度経済成長期は「あれも」「これも」実現できる時代だったが、成熟期は「あれか」「これか」を選択しなければならない。つまり、主権者である住民は政策の選択を迫られており、政策によって選挙の投票先を決める時代に入ったと政治家は意識するべきだ。

 私が顧問を務める早稲田大学マニフェスト研究所などの共催で毎年、首長や議会の優れた取り組みを表彰する政策評価の大会「マニフェスト大賞」(メモ)を実施している。ここで表彰されるような“善い政治”は、実は至る所に存在している。こうした善政をより発展させて他の自治体が取り入れるという地域間の「善政競争」が私どものテーマだ。

 従って、地方議員は各地の善政を徹底的に“パクる”べきだ。善政競争によって地域が発展し、さらに日本全体も変えていけるだろう。

■次選挙は「約束守ったか」で審判

 ――マニフェストを作成する際に重要なことは。

 北川 マニフェストは、選挙後に検証できるものでなければならない。政治家は、公約に掲げた政策を実行して検証した上で、次の選挙で達成状況を公開して新たな政策を示すというPDCAサイクル【図参照】を回すことが重要になる。有権者にとっても、各政治家が「約束を果たしたかどうか」が明確になり、評価しやすくなる。

 一時はマニフェストが「破られる約束」などと揶揄されることもあった。それは、数字に基づかない荒唐無稽な選挙目当ての政策を掲げていたからだ。候補者や政党が、そのようなマニフェストまがいの政策を示すことは、政治への不信感を招くだけで断じて許されない。

■「チーム議会」で首長と切磋琢磨

 ――政策を実現する上で必要な視点は。

 北川 例えば、少数会派の議員が議長となって決定権を持たないケースでも、議会事務局と連携して多数会派を説得し、政策を実現する例がある。このように議決機関全体が「チーム議会」として、執行機関と対等な関係で切磋琢磨していくリズムを確立するべきだ。自己決定できる自立した地域づくりにつながる。

 一方、少子高齢・人口減少は避けられず、公共機関だけで現行水準の公共サービスを賄うことは不可能だ。地方が存続するためには、民間の知恵も借りながら、新しい発想での政策立案が求められる。

 ――今後の課題は。

 北川 デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展で選挙のあり方も変わってきた。インターネットは、不特定多数の有権者とつながれるため、とんでもない方向に民意が揺れることも民主主義の難しい点だ。DX時代の民主主義のあり方を確立する過渡期であり、確かな民意を反映できるシステムの構築が求められている。

■(公明党への期待)現場から国動かす先導役に

 ――公明党への期待は。

 北川 公明党は、マニフェスト大賞に熱心に応募いただく政党の代表格だ。例えば、公明党岡山市議団は2014年、16年、17年と3回にわたって表彰されている。このうち17年では、マニフェストのPDCAサイクルを確立した上で、継続的に政策を実現していることが評価され、議会部門で「優秀マニフェスト推進賞」を受賞している。

 さらに22年には、ローカル・マニフェスト大賞の議会・会派の部で、荒川区議会公明党(東京都)が「優秀賞」を受賞した。区議会議員選挙ごとに、前回掲げた政策の達成状況を数値化し、新しいマニフェストと併せて公表する取り組みを示した点が評価された。

 いずれも共通するのは、住民に約束した政策の達成状況を公開し、実現できたかどうか次の選挙で評価を受けるということを身をもって実践している点だ。また、マニフェスト作成過程では、住民との協議を経ていることや、実績や目標を数値で分かりやすく示していることも重要だ。こうした受賞歴を見ても、公明党はローカル・マニフェスト推進の一翼を担っていると実感している。また、優れた活動を展開している議員個人や、会派も数多いと認識している。

■地域間の善政競争もっと広げて

 公明党には、国・地方議員が3000人近くいて、地方の声が国政や党本部に届く体制が確立されている。この強みを生かし、各地の公明党議員・会派が行っている善政を全国に広げてもらいたい。善政競争を促し、地方から国を変えるという好循環を生み出す先導役を、公明党に果たしてもらいたい。


 きたがわ・まさやす 1944年三重県生まれ。早稲田大学卒。三重県議(3期)、衆議院議員(当選4回)、三重県知事を2期務め、2003年に退任。04年に早稲田大学マニフェスト研究所を設立し所長を務め、現在は顧問。同大学政治経済学術院教授などを経て現職。