介護の仕事をしていた時
鉄道唱歌を毎日うたうおばあ
ちゃんがいました。
お名前はせいさん。
せいさんは、私達の事も次の
日には忘れてしまいます。
毎日顔を出してくれる
息子さんのことも誰なのか
わかりません。
いつも息子さんに
「どなたか存じ上げませんが、ありがとうございます。」
と、頭をさげていました。
そんなやり取りを、若い私は
何ともいえない気持ちでみてい
ました。
ですが、そんなせいさん
鉄道唱歌だけは
全て覚えているのです。
あの長い歌詞を
唄っているのです。
もう、何十年も昔のうたを…。
そして
唄っている時のせいさんは
イキイキしていてとっても
楽しそうなのです。
「せいさん、凄いですね!!」
と、言うと
「先生、ありがとうございます」
と、嬉しそうでした。
私達の事を学校の先生だと思っていたようです。
鉄道唱歌をうたうせいさん。
女学生時代でしょうか。
楽しかった時だったのでしょうか。
家族は分からなくなっても
家族と過ごした時よりも
記憶に残っているのは
若い頃の思い出
悲しいでしょうか
親子なのに
夫婦だったのに
そんなふうに
若い時は感じていたけれど
今は
ぼんやりと
わかるような…
私達は
やっぱり
個
なんだなと…。
そして
家族の為の自分の人生
じゃなくて
自分の人生の中の家族
なのかなと
思うんです…。