真赤の紫陽花。

  

 

ユウ:僕はこの人の本を読んで育った。

まだ父と仲が良かった頃の想い出の一冊。

 

 

8才の頃に両親が離婚して

母についていった僕にさみしい想いを

させないように父は忙しい仕事の合間をぬって

年に数回会いに来てくれた。

 

 

カーソン「ひさびさに大笑いしたよっ。

水風船ふたつ投げるヤツがいるかよ。

相変わらずのおしゃべりめっ(笑)」

 

 

ユウ「パパっ」

 

 

離婚する直前に

父と大喧嘩。僕は激高してしまい、

彼の左頬に大きな傷をつけた。

 

 

その後、しばらく誰とも話さなくなり

学校にも行かなくなった。

でもしばらくして落ち着くと

離婚後の父と二人で外で会うようになった。

 

 

父は何もなかったように離婚前と同じ笑顔をし

同じように抱きしめてくれた。

そのせいもあってか本来の性格が戻ってきて

また話し始めるようになっていた。

 

 

とりあえず、この頃は、まだ仲が良かった。

 

 

紫陽花の好きな父の影響で

絵と共に読書好きな僕は本屋で綺麗な紫陽花の表紙を見つけた。

それは詩集だった。

父にもみせてふたりでたまに語り合っていた。

 

 

作者の佐々川先生は、父とたまたま同じところで出版していた縁もあって

サイン会の日にちを会社に教えてもらって二人で会いに行った覚えがある。

 

 

カーソン「うわ~ん、佐々川君カッコよドキドキ音譜ラブラブ!

 

 

当時はまだヒットする直前で人の好い兄さん的な印象だった。

 

 

本当に本人ならショックだな。

先生は現実でも「紫陽花の君」と一緒になったはず。

幸せなんじゃないの?

 

 

ユウ「もう彼女に付きまとうのは止めて下さい。

迷惑してます。きちんと別れて下さい。」

 

 

先生にこんなこと言うのはとてもイヤだよ。

尊敬している人の私生活に批判なんてしたくない。

 

 

純愛文学 詩集「紫陽花の君」

僕はこの本に影響を受けている。

そうこの人に影響を受けていると言っていい。

 

 

「困難を乗り越えても未だに私と共にいてくれる妻。

私のすべて「紫陽花の君」へ捧げる。」

 

 

いつものように夕暮れ、二人の家に戻ると

畳の上に枯れた紫陽花の

萼片(がくへん。花びらに見えるところ)

床にバラバラに散らばっていた。

 

あたりを見回すと

帰りを待っているはずの恋人の姿がない。

書置きもなくそれは突然。

彼女の行きそうな場所を探すために

警察に届けた後に、僕はしばらく会社を

休むことにして旅に出た。

 

 

君を探してこの地に来た。季節は11月。

冬が近づき紫陽花も枯れた寒い日のことだった。

 

 

『五月雨を想いながら

十一月の雨だれに耳をすます。

 

 

季節は移ろわず

 

 

 

枯れた街路樹鉛色の空に

君と過ごした真赤の紫陽花。

残像飲み浮かぶ。』

 

 

 

ユウ:僕は10才に初めて読んでからこの詩集の中に出てくる

主人公の恋人「紫陽花の君」に疑似恋愛している。

 

 

紫陽花が枯れる11月から翌年、再び紫陽花が色づく6月までの話し。

主人公の元から突然居なくなった恋人の紫陽花の君を探しに行き、

再び出会い一緒になるまで。

その時々の主人公の心情を詩にしたもので、僕の愛読書。

 

 

佐々川「…場所を変えないか?

君と僕がよく知っている所へ行こう。」

 

 

佐々川「ユウ君?だよね。成人して立派になったじゃないか。

おぼえているよ。お父さんとは出版社が同じなので、

以前に何度かお会いしたことがあるんだ。

お元気かな。まさかこんな状況で再び会うことになるとは。」

 

 

 

 

 

 

つづく…

  

前回に書き忘れましたが

ゲームデータは

詳しい人にみてもらい

現在なんとか

復活できています。

ただまだ不安定で

様子見をしながら

話しを進めています。


ご心配をして

いただいた方々に

ご報告が遅れました。

応援メッセージなど

ありがとうございました。

励まされました。

今後も引き続きお話し作り

頑張りますね。


残暑厳しい8月の

狭い部屋一畳分

の片隅から

作者:まーたん