<人情の立ち食いそば>

この店が、気に入っている理由は10。

※つゆに混ぜると後口が心地よい、おろし生姜が置いてある。

※麺が平打ちで太く、絶妙な食感と食べ応えを生む。

※若芽がうまい。厚くしなやかな三陸産・震災後に変わり「ご迷惑をおかけしますと丁寧な断り」。

※小盛がある。

※具を一つ増やすたびに、10円ずつ安くなる。

※サービスがいい。立てば水が置かれ、無くなれば直ちに補充。カウンターは常に拭かれる。

※冷やしはぶっかけではなく、冷たいかけ汁がなみなみと注がれる。

※桜海老や青菜などが入った、お得なたぬき。

※冷やしたぬきにすると、たぬきに熱いかけ汁をかけて、なじみやすくする。

※自分の生活圏内にある。

※吹きさらしの外に面し、席数6席の、正統派立ち食いそば屋形状。

 全種類食べ、落ち着いたのが、わかめたぬきそば380円である。

 たぬきの油がコクを出し、そこへわかめが香る、ベストマッチである。

 長年通っているだけあって、様々な人を見た。

 一口すするたびに、うまいなあと呟き、隣の僕にも、「うまいよねえ」と、同意を求めた60過ぎのおっさん。

 彼女を外で待たせながら、異常に食べるのが遅い、20代欧米系白人。

 「なんでも食べな」と、一万円を財布から出した、黒皮ジャン30代男と、舎弟二人。

 いなりを、温かいそばつゆに浸けて食べている、30代サラリーマン。

 いつも思う。たった380円で幸せになれる先進国は、どこにあるのかと。

「かさい」中野

https://tabelog.com/tokyo/A1319/A131902/13017433/