13-1 目標スコアを設定しないでプレーする
スコアばかりに縛られると、選択肢の幅を狭めることにもなりかねない
目標スコアを決めてプレーする上達法もありますが、私はとくに決めずにプレーすることをお勧めしています。
競技会などの場合ならば、優勝スコアや予選通過ラインを見定めて、目標を達するためのプレー選択という観点が大切になることはあるでしょう。
でも、例えば90を切る、86や82を切るという具合に「ベストスコアを出す」という目的の場合は考えものだと思うのです。そのようにスコアを目標にすることは、自らカベを設定し、険しく登りづらくしているともいえるのではないでしょうか。そんなところに、実際にはカベなどないのですから。
目標が81だとすると、「ボギーを9回打てる」という「貯金」があるとも考えられます。しかし、その貯金がなくなってくると心の余裕もなくなっていきます。そして、残りの貯金を守るために、いつもと違うプレーの選択を強いられがちです。あるいは、貯金を増やそうとして無理してしまうこともあるでしょう。
目標に縛られて、本来たくさんあるはずの可能性を狭めてしまいやすくなります。それが自分の力を出し切ることにつながるのか、はなはだ疑問だと思うのです。
それよりも、1ホール1ホール、そして1打1打において、できることすべてのカードを使える状態にしておく。そうすれば持っている力を出し切って、良いスコアを出せると思います。
13-2 一期一会のプレーにおけるベストを考える
1ホール1ホール、そして1打1打でベストを尽くすことを考えると、同じホールでも目指すスコアが常に同じということがなくなるはずです。そのときのコース状況、そのときの自分の状態などによって、ベストの尽くし方が変わり、目指すスコアも変わるのです。
体調が良いとき悪いとき。ショットの調子が良いとき悪いとき。ドライバーが良くなってきたりアイアンが良くなってきたり、コンディションが大幅にアップダウンすることもあるでしょう。
晴れと雨、また風の強弱や向き。気温。湿度などの天候状況。こうした環境の変化に敏感になることも必要でしょう。
もちろん、晴れより雨が、また無風より風の強い日のほうが、スコアが悪くなる、と決まっているわけではありません。そうした条件をうまく利用できれば、スコアを良くする可能性が見いだせることもあります。
210ヤードのキャリーを打てば越えるバンカー、あるいはいつもプレーしているホールのいつもは越えているバンカーでも、その日の風、その日の調子によっては、バンカー越えでドライバーを使わないほうが正解かもしれません。「いつもの……」にこだわらないことは、ベストを尽くすにはとても大切なことです。
同じコースに、同じゴルファーが挑むとしても、双方が常に同じコンディションとは限らない。だからそのホールでのプレーは、まさしく一期一会といえます。茶道でいう一期一会とは、その機会は一生に一度の出会いであるということを心得て、誠意を尽くす心構えを意味するといいます。その心持ちでどんなホールもプレーすれば、得るものも大きく、また上達にも近づくと思います。
13-3 パーの取り方のバリエーションを増やす
シチュエーションによって、最適な手を打てるカードを多く持つことで、考え方や技術の幅が広がっていく
同じホールでも、体調や天候などの状況の違いによって目指すスコアが変わることもあれば、目指すスコアは同じパーだとしても、そのパーの取り方がまったく変わることもあるはずです。
例えば、ピンまで残り150ヤードを狙うケースです。無風なら7番アイアンを使って狙う人でも、風が吹いていたら番手を変えるはずです。アゲていれば、迷わず6番を持つ人。フォローならば8番という人は残念ながら「まだまだだな」と言わざるを得ません。
「ゴルフがうまい人や強い人ほど、幅が広い」ということが言えるのです。アゲている風の強さによっては「7番で届く距離」という考え方をまるきり捨てて7番ウッドを使うことも厭わないでしょうし、フォローでも2番手落として9番を持つこともあるものです。
さらにいえば、同じ無風というコンディションでさえ、いつも7番を使うとは限らず、場合によっては5番6番や8番などを使って乗せることもできる。考え方だけでなく、技術の幅も広くなっているものです。
多くの選択肢を見いだせること。その状況で使える「カード」をより多く持っていると言い換えることもできるでしょう。それこそ、うまいと思える人の条件です。
13-4 技術と思考の幅を広げよう
プレーの選択肢を広げるのは、経験です。
そして、経験は選択肢を広げるだけでなく、多くの選択肢のなかから実行する一つを選び出す「直感」を育てることにもなります。この「直感」も、ゴルフの上達のための大きな要素なのです。
いろいろな攻め方を経験することが、次の機会により多くの選択肢を見つけることにつながり、また、そのなかから「今の自分ならどれがいいか」と選択する直感をも磨くことになります。
経験を積むという面において、そのトライが成功するかどうかは関係ないことも、最後に強調しておきます。失敗してもいいので、新たな発想で臨む機会をつくりましょう。いつもベストスコアを目指してプレーするのでなく、そんな「練習ラウンド」の機会をつくることをお勧めします。
練習ラウンドの仕方については、さまざまなお勧めを用意していますので、機会をあらためて紹介したいと思います。
IQゴルフナビ スコアマネジメントより