9-1 自分を苦しめる材料を探すか、楽にする材料を探すか

ホールの攻め方をどうするか。もちろん、セオリーはあります。でも、それを間違ってとらえると、セオリー通りに攻めたとしても、いい結果が出るとは限らなくなってしまいます。実際に、そのような経験をされている方が多いのではないでしょうか。

 例えば、フェアウェイの右にも左にもOBがあるホール。ティーショットをドライバーで打つと、どちらに曲がってもOBに届きそうです。さて、そこでどうしますか。
 3Wや5Wならば曲がってもOBまでは届かない、と計算するのがセオリーにのっとった模範的な回答の一つでしょう。
 でもこれは、3Wや5Wなら「OBまでいかないから安心」と考えられる人にとっての正解なのです。

 ときどき見かけるのは、「セオリーだと3Wや5W。だけど、3Wは苦手なんだよな。ヘッドは小さいし、ちゃんと当たるかな」と不安に思うなかでプレーする人。そして「5WならOBはいかないだろう。でも、距離は十分出しておかないとセカンドが難しくなる。しっかりヒットしないとダメだな」と考え、自分に必要以上のプレッシャーをかけたなかでプレーしている人。どちらも、いいマネジメントとはいえません。

 なぜ、それらがいいマネジメントとはいえないのか。
 マネジメントの本質は、「自分を楽にしてプレー」することにあります。


しかし、上に挙げた例はどちらも、「自分を苦しめてプレー」しています。それでは、いいプレーができる確率は低くなります。考えたわりに、いいスコアにならないパターンです。


 すべての不安やプレッシャーを取り去ってしまうことは、難しいかもしれません。しかし、そこにあるいくつもの「不安のタネ」を一つひとつ取り除いて、軽くなっていくのがいいマネジメントです。「不安のタネ」をさらに背負ってしまって重くなるのでは、意味がありません。



クラブの選択をはじめ、マネジメントの本質は「自分を楽にしてプレー」することだということを忘れないようにしたい

9-2 楽にすることは甘やかすことではない

 では、先ほどの状況で、3Wや5Wでは「自分が楽にならない」人の場合、どうすればいいでしょう。左右のOBに届かなければいいのですから、ドライバーを選択し、短く持ってコンパクトに振るというのも正解です。

 あるいはそのような打ち方にも自信がもてず「自分が楽にならない」のであれば、自信をもって臨める番手まで落とせばいいのです。

「5番アイアンなら、自信をもって打てる」のなら、そうしましょう。間違っても「でも、それでは距離が足りないから、2打目が難しくなる」とは考えてはいけません。2オンが難しくなるのであれば、3オンでパーを取ることを視野に入れておくか、あるいはこのホールではボギーでも悪くないと考えておくのです。

 それが「自分を楽にする」マネジメントになり、ひいては結果的にスコアは良くなると期待できます。メンタル的に楽な状態ならば、いいプレーが引き出される確率が高まるからです。

 しかし、こうした選択を「自分を甘やかす。これでは自分が成長しない」と考える人がいます。果たして、そうなのでしょうか。

 左右にOBのあるホールで、ティーショットを3Wや5Wでいいところに打つという「セオリーにのっとった攻め方ができるようになる」ことだけが成長といえるのならば、何度も挑戦し、それが成功したときにやっと「成長した」といえるのかもしれません。

 しかし、ゴルフで、いいスコアをつくることを目的としているのならば(バーディを取ろうと考えるのでしたら答えは違ってきますが)、このホールでは「最後までパーを拾うことをあきらめずにプレーする」こと。そして、その攻め方で実際に「パーを拾う」ことが、目的を達成することになり、自分を「成長させた」ことになるのではないでしょうか。

 

9-3 ワンパターンに陥ることをやめる

「自分を甘やかしてパーを拾っても、その場限りのご褒美に過ぎない。それが自分の実力を高めることにはならない」と考える人もいるかもしれません。
 しかし、これも違うと思います。

 もとより、「セオリーにのっとった攻め方」は一つしかないわけではありません。あるいは「その日のそのホールにおける、自分にとっての正解の攻め方」も、一つしかないわけではないのです。
 しかし、セオリーを尊重し、「マネジメントの正解」を求めようとする人は往々にして、同じようなホールに対して同じような攻め方をしようとし、そして多くの場合は、同じミスをしてしまうことにもなります。

 左右にOBがあったとしても、調子がいいならドライバーを使ってもいい。調子が良くてもプレッシャーはかかるでしょうが、それを乗り越えていいショットが打てれば自信も付きます。
 7番アイアンでティーショットを打ち、さらにミドルアイアンを続けて2オンして、ワンパットで沈めるのも、スコアカードに記入するのは同じ数字。「模範的なパーではない」と卑下する必要もありません。

 そして、こうした攻め方で、さまざまな方法でパーを取ることができるようになれば、これはすなわち「自分の実力を高めたこと」になるのです。いや、実際にパーを取るまでには、多少時間がかかるかもしれません。しかし、このような攻め方も「正解の一つ」なのだと考え、実際にそれを実行しようとする柔軟な発想をもつ。そのこと自体が、私には「自分の実力を高めた」として自信をもっていただいていいことだと思えます。
 


コースの攻略法は、一つではない。柔軟な発想をもつことも、実力を高めるのにつながる




IQゴルフより