この歳になるまで、実は「公共交通機関での通勤」というものを経験したことがなかった。

田舎育ちの私にとって、高校までは自転車かバイク。大学進学で親元を離れ、都会暮らしになったけれど、生活は寮。通学もバイクか徒歩。結婚して寮を出ても、バイクで通える場所に住んでいた。

30代で転職した時も、あえてバイク通勤できる範囲の会社を選んだ。しばらくして勤務先が遠くに移転したものの、通勤手段はバイクから車に変わっただけ。もちろん、飲み会がある日は電車を使ったこともあるけれど、それはあくまで例外。

ところが定年後、都内の仕事を請けるようになって、ついに公共交通機関での通勤が始まった。人生で初めての電車通勤。でも、今はフリーランスで、客員研究員という立場。出勤も不定期だから、定期券ではなく、都度払いであとから精算している。

そんな話をすると、「都会に住んでて定期を持ったことがない人なんて珍しいね」と驚かれる。

実際、電車通勤も悪くない。座って行ける電車を選んでいるから、通勤時間も案外快適だ。ちょっとした作業もできるし、うとうとと居眠りすることもできる。

車内でふと周りを見渡すと、いろんな人がいる。学生は学校へ向かうのだろうし、スーツ姿のサラリーマンも「出勤中だな」と分かる。でも、私と同じくらいの年代の人たちを見ると、「この人はどこへ行くのだろう?」とつい考えてしまう。

明らかに仕事に向かっている服装の人もいれば、どこかへ遊びに行くのか、それとも別の目的があるのか分からない人もいる。朝早い時間だから、多くは仕事に向かうのだろうけど、「その服装で、どんな仕事してるんだろう?」と、つい妄想が膨らむ。

そんなふうに見ていると、思うのは「意外と年配の人も働いているんだな」ということ。年金だけでのんびり暮らせる人は、きっと恵まれた人なのだろう。

ちなみに今朝は、いつもより10分早く家を出て、1本早い電車に乗った。さて、どれくらい早く職場に着けるだろうか。