最も美しい蒸気機関車といえば、貴婦人と呼ばれるC57が
通り相場で、元祖復活蒸機のC57 1は女王のように取扱
われ、この新津の180号機も同じように説明されますが、
私にとっての180号機は「ちょっと違った」のです。それは、
ナンバープレートの取り付け位置が高いから。

本質を語るような素振りをしておきながら、すっかり形態に魂を
奪われているような情けないお粗末振りなのですが、何故かどう
してか刷り込まれた蒸機の美しさとは、煙室扉兆番の高さにナン
バープレートが固定された調和なのです。いくら記憶を辿っても
何時からなのか何故なのか分かりません。現役時代の著名機、例
えばC62 2も3もC57 1だって同じく高めで違和感がなかっ
たのに、このC57 180だけ取って付けたような違和感があっ
て近寄りたくなかったのです。だから、なぜこれが貴婦人?と
思ってきました。

そういう頭の悪さが災いして、貴婦人をみるならサイドビューに
限ると思い、同じC57をみるなら繰出管がランボードの下に
ある3次型に限ると思っていました。

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私は、残念ながら現役蒸機に間に合わなかった世代ですので、シゴ
ナナが貴婦人だと言われれば、ああそうかと思ってきたのですが、
これはどういう蒸機を形容しての愛称なのでしょう。じつはしっ
くり来るようで来ないようで、若干の違和感があります。

一般的に、蒸気機関車というのは、正面や斜め正面からの眺めが
シンボリックに扱われ、それが一人歩きをはじめて力強いとか、
カッコいいとか、煙を吐いて凄いとか、皆さんそう仰いますけれ
ども、例えば、あなたにとって最も好きな機関車は?という問い
なら、誰でも自由にお好みを言えばいいわけですが、例えば最も
美しいというなら、主観か客観か多数決なのか判断基準が不明瞭
なため、貴婦人の愛称は愛称であって定番などと同じ種類の評価
なのではないかと思います。いわゆる美人投票と同じです。

私が違和感を感じるのは、繰出管がランボードの上でくねくねやっ
てるのが「美しさ」と反する存在だからで、だから世間様には
大変申し訳ないのだけれども、1号機は「ちょっと違った」の
です。集煙装置が付いたら、もうなおさら。

だから、繰出管がランボード下にある180号機こそ貴婦人だと
思いたかった願望のようなものを長年持ち合わせてきました。

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さて、しかしいざ乗ってみたら本機は調子が絶好調で、7両の
客車で峠越えを難なくこなします。運転時間も復活蒸機列車
としては最長の3時間半以上もあって、通り掛かりのイベント
乗車を遥かに越えた高い満足感も得られます。

ちょっと興味深いことに、このC57 190号機は昭和21年の
三菱製ですが、ボイラーは昭和33年の日立製でした。罐の載せ
換えが行なわれたようです。この車歴に比べて10年強若いボイ
ラーも絶好調の秘密のひとつでしょう。

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これなら特別車両を驕って集客するのではなく、上越線のように
旧型客車で勝負したらどうかなんて思ったりしますが、それは
やはり新潟発の長距離山岳列車という性格から難しいのでしょう。

観光や遠足や様々なお客さんを乗せて、阿賀野川の車窓を眺める
のが最適です。蒸機が絶好調なのですから、観光列車としては、
できれば九州の同じ蒸機列車のようなエンターテイメントのソフト
面を強化すると、数多くの蒸機列車のひとつではなく、独自の
ポジションを確立できるようになるポテンシャルを秘めていると
思います。

来年のNHK大河ドラマ「八重の桜」は会津がロケーションです
ので、益々この蒸機が持て囃されるでしょう。だって、地元の
人々に愛された貴婦人ですから。

感謝!