先日、とある地方に出張しました。

ひと仕事を終えて帰る前に土産を買おうと地元の物産を扱う
お店に入ったのですが、どれもピンときません。

いえ、正確に言うと、その土地で採れたり作られたりした
商品が並んでいてどれもその場所でしか手に入らない、
土産物としては十分な商品ばかりで目移りするほどなのですが、
そのどれもが魅力的に見えないのです。

感覚的には「確かに土産になるのだけど、もらった人が
嬉しくなるようなものか?」と思うと、購買意欲がそそられ
ないといった感じでしょうか。

例えば、地元で採れた野菜で作られた漬物。

透明ビニールでパックされてラベルが貼られたパッケージ。
それがザルの上に並べられていて800円でした。

その他、地方の銘菓と呼ばれるお菓子も、きれいな包装紙で
丁寧にラップされて積み上げられていますが、どれも似た
ような印象でこちらも食指がそそられず、結局私は別のものを
買い求めて帰りました。

先の例でいうと、漬物の土産は「アリ」の商品だと思います。

でも、買って帰ろうというところに辿り着かなかったのは、
価格の問題ではなかったように思います。皆さんも、お土産
用の商品が1000円以下なら、むしろ安いと感じられる
くらいでしょう?

帰りの列車に乗った後で、なぜ買わなかったのだろう?と
自問したのですが、自分が買わなかった理由はパッケージだと
思い至りました。

地場野菜漬物のお土産が、スーパーで販売されている商品と
同じようなパッケージだった、あるいはスーパーで販売
されている商品よりも劣るパッケージだったので、魅力
(=地場の特別感と美味しさ)が伝わってこなかったからです。

土産物というのは、たいてい帰りの場面で購入します。
ですから、その土地での良い経験を持って帰ろうとか、周囲の
人に伝えようとするのが土産物です。

仮に食べ物だとしたら、例えば前夜に旅館の夕食で食べた
地場産の野菜や魚や肉が美味しかったので、それを持って
帰りたいというニーズがあります。

その「美味しさ」と、「持って帰る」と、「周囲に伝える」
という機能が、土産物商品のパッケージに求められます。
もしそれがデザインされていたら、1000円を超えていた
としてもその漬物を買って帰ったと思います。

そういう意味で、よく出来た「売れるパッケージデザイン」
の実例をご紹介します。大阪難波の「自由軒・名物カレー」
です。
http://goo.gl/gh14D

自由軒カレーの歴史は明治末期に遡ります。

「現在と違ってご飯を保温する設備のない時代に、いつも
お客様に本当に美味しいカレーを食べていただきたい。」
「ご飯は冷めていても暑いカレーベースとよく混ぜ合わせる
ことで、熱々の美味しいカレーに生まれ変わる。」

というカレーなので、野菜や肉は入っているものの、よく
煮込んであって姿形は見えません。ご飯にかけて食べる
普通のカレーと違って、ご飯と混ぜてしまってから生卵を
落として食べるカレーなのです。

そのユニークなカレーが写真でパッケージ表面にドーン。
もちろん、お店の名前も写真の上に大きくドーン。

さらに、食べ方の解説がパッケージの上部にイラストで
配されて、若女将「純子さん」の似顔絵入り、おまけのようで
味を決めるスパイスの役割を果たす「四代目ウスター
ソース」付と添え書きがされて、

結果、初めて見る人には「面白そうだから食べてみたい」、
お店で食べたことのある人には「あのカレーが家で食べ
られるのか」と思ってもらえるパッケージが見事に出来
上がっています。これで450円。

レトルトカレー商品としては非常に高額ですが、それでも
欲しくなってしまいます。

これは、顧客が「何を欲しているか」または「どんな情報が
必要か」をよく知っていて、盛り込まれて出来ているから
「欲しくなって買ってしまうパッケージ」になっている
のです。

よく「モノはいいんだけど、何故か売れないんだよねえ」
と悩んでいる社長さんをお見受けしますが、「良いものを
分かってもらうパッケージング」で作り上げると、同じ
商品でも売れるようになります。

とくに地方の特産物などで商品化された、農産物加工品や、
日本酒、蒸留酒、ワインといった、容器にラベルを貼った
だけの商品は、まだまだパッケージをデザインするフロン
ティアが残っているのではないでしょうか。

※この記事は、メルマガ記事の加筆・修正版であり、ビジ
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