先週、日本の自動車メーカであるマツダが、イタリアの同業フィ
アットと共同でスポーツカーを開発・生産するというニュースが
報道されました。面白いニュースです。

報道を読んで看ると、マツダが開発した次期ロードスターをフィ
アットに供給して、フィアットは次期アルファ・スパイダーとし
て販売する見通しです。

スポーツカーというのは、面白おかしい存在で、自動車メーカに
とっては大量の販売が見込めない”美味しくない商品”ですが、
社会一般の認知からすると自動車メーカの象徴という強力な存在
感を持つ経営機能的価値があります。

また今や少数派になりつつある、自動車好きやマニアやエンスー
と呼ばれる方々からすると、商品性よりとにかくその存在こそが
目的だともいうべき、存在全てぐらいの重要性があります。

その面白おかしく重要な存在が、ついにOEM供給になるという
ニュースであり、だからこそこのニュースが面白いのです。

戦前は高級自動車メーカであり、戦後は一般大衆向けスポーティ
カーメーカであったアルファロメオにとって、スパイダーという
クルマは中身が汎用部品の寄せ集めであったとしても、自動車好
きから(イタリアの)社会一般まで、アルファロメオの象徴でした。

それは、中身がフィアットのシャシーにフィアットのエンジンに
なっても同様で、そこで絶縁した人は純粋にミラノのアルファを
愛する真のアルフェスタとも言われる方々でしたでしょう。社会
一般は違ったと思います。

しかし今度は、日本のシャシーに日本のエンジンになります。こ
れは自動車好きから社会一般までどういう反応をみせるか?自動
車好きの反応は、もう瞼に映るかのようです。しかし、社会一般
は違うと思います。

マツダがフィアットとクルマを共同開発するなら、お互いに取捨
することがあるでしょう。マツダもフィアットも自国製の純粋さ
は失いますが、マツダは社会一般にアピールするイタリアの商品
開発の巧みさを得られるし、フィアットはやっとマトモなスポー
ツカーを販売することができる。

実際にスポーツカーを購入する顧客はどうなのか?ロードスター
にもスパイダーにも、決まった顧客層が存在する。ロードスター
の顧客は、ロードスターがロードスターなら問題ないと捉えるだ
ろうし、スパイダーの顧客はロードスターのボディに人食い蛇を
付けただけでは買わないだろう。なぜなら、スパイダーの顧客は
スポーツカーを買うのではなく、スポーティなイメージのスタイ
リング第一のクルマが欲しいからです。

ならば、ロードスターにスパイダーらしいボディを架装しないと
いけない。ロードスターは、スパイダーの影響を受けたボディに
スタイリングを変更しないといけない。クルマ開発上の大問題だ。

だが、その点はもう心配ない。すでに用意はできている。

アルファのスパイダーには、ピニンファリーナが開発したスタディ
のドゥエットタンタがあるのだから、それを着せればいい。

duettottanta01.jpg

マツダのロードスターには、同じくピニンファリーナがホンダ向
けに開発したスタディのアルジェント・ヴィーヴォがあるのだか
ら、それを着せればいい。

argentovivo.jpg

もちろんベースシャシーが違うのだから、そのまま着せることは
できないが、それはこれから合わせることができるだろう。

こうすれば、アルファを取り巻くクルマ好きと社会一般に美しい
新型スパイダーを正々堂々と発表できるし、ロードスターを取り
巻くクルマ好きと社会一般にステージアップしたロードスターを
正々堂々と発表できるだろう。とくにマツダは、他車とのスタイ
リング整合性が向上するから、企業ブランドの価値も上がるだろ
う。

こうして、スポーツカーは面白おかしく未来永劫生きていくこと
ができそうです。

感謝!