今年のGW後半は、衝撃的なニュースが飛び込んできました。

多くの方が報道でご存知の通り、関越自動車道で夜行ツアー
バスが高速道路の防音壁に突き刺さる衝撃的な事故を起こし、
犠牲者が出たものです。

直接の原因は運転手の居眠りであることが判明し、その後の
捜査でバス会社に30を超える法令違反が見つかったと報道
されています。これを受けて、ツアーバスの規制強化を求め
る声が上がっています。

事故と原因の全体像は、報道の通りだろうと思いますが、事
故の再発防止という観点からすると、貸切バスの規制強化が
最善策というのは早計ではないかと考えています。

今回の事故を受けて、規制緩和で参入する事業者の増えた貸
切バスの安全性の問題は、広く報道されて指摘されましたが、
この問題は今に始まったことではありません。

私が製作に協力し、2006年の11月にNHKで放送され
た番組で、すでに貸切バス業界の構造が問題視され、いつか
事故が起きるのではないかと指摘されていました。もう6年
も前のことです。

今回、私はもうひとつの点を指摘させていただきたいと思い
ます。それは、旅客自動車運送業(バス・タクシー)における
利用者不在の責任の瑕疵構造です。

高速道路を利用して大都市圏を結ぶバスサービスは、じつは
2種類の業態があります。一般乗合旅客自動車運送事業(路線
バス)と一般貸切旅客自動車運送事業(観光バス)です。

今回事故を起こしたような格安高速バスは、後者に属します。

前者の路線バスは、例えば東京駅から名古屋駅まで東名高速
道路を結ぶJRバスのような事業で、インフラ的性格が強い
ため規制も厳しく、ダイヤや運賃も規制対象です。

後者の貸切バスは、同じ東京駅から名古屋駅まで東名高速道
路を走行しても、バスを貸し切った「旅行」という位置づけ
のため、料金(運賃ではない)は自由に設定できます。

一方、利用者は、

・同じバスで、
・(東京~名古屋間のような)2点間を移動できれば、
・発着時間が便利で、代金も安い、
→後者がいい。

ということになります。

すなわち、便利で安く移動したいという利用者ニーズに対し
て、規制によって十分な対応に遅れていた路線バス事業者の
サービス実態との間隙を突いて普及したのが、貸切バスを利
用して旅行として販売された大都市間移動サービスだったの
です。

しかし、今回指摘したいのは、消費者の本質的なニーズに供
給側が応えていない責任不在です。

先述の通り、消費者は都市間移動の格安バスサービスを求め
ました。そのニーズに応えたのは、旅行会社のバスツアーと
いう形です。今回のケースも高速バスツアーを販売したのは
旅行会社でした。バス会社は運行を下請しただけです。

ところが、日本の旅行会社(旅行業者)は、旅行商品を企画・
販売しますが、消費者の旅行ニーズを請負うのではなくて、
取次をするだけのため、事故が発生した時の損害賠償責任は
直接負担しません。

今回の事故に当てはめると、金沢から東京を経由してディズ
ニーランドに向かう「旅行商品」を販売したのは旅行会社で
すが、あくまで企画・販売をしただけで、事故が発生しても
基本的に責任を負わず、責任を負うのは旅行を下請したバス
会社です。

そんなことが許されるのか?と思われるでしょう?本当です。

バスでイメージしにくければ、海外旅行に例えると分かりや
すいかもしれません。

海外へのツアー旅行を企画・販売するのは旅行会社、旅行中
の事故で責任を負うのは、航空会社やホテルやバス会社です。

他の業界で同じようなことが起こったらどうでしょう?

新築のマンションや一戸建を購入して、万が一瑕疵があった
とき、企画販売したディベロッパーは販売しただけで、建築
した建設会社しか責任を負わないなんて、許されるでしょう
か?コストを優先して建設会社に下請させ、中小の建設会社
だと責任を負えないなんていう、社会問題が発生するリスク
の隙間を作ってしまうことになります。

これが日本の旅行業界の仕組みです。この構造がそのまま維
持され、貸切バス事業だけ規制強化されて、再発防止になる
のでしょうか?

国交省は、従来から路線バスと貸切バスの規制を調整して一
体化する方針を固めていたため、今回の事故により新制度を
前倒しするものとみられます。

適切な規制を求めるという視点から、最前線でサービスを提
供するバス事業者側の規制見直しは進むとして、サービスを
販売する旅行業界側の規制見直しがなされない限り、利用者
に対するサービス提供のモラルハザードは放置されたままに
なってしまいます。

このモラルハザードを防ぐために、バス旅行を販売する旅行
業者にも観光バスの許可を取得するよう新制度が導入される
予定とのことですが、バス旅行に限らず旅行商品の販売に関
して旅行業者が提供するすべての輸送業の許可を取得すると
なると、旅館業、鉄道事業や航空輸送事業の許認可まで取得
しなければならなくなり、非現実的で到底実行不可能です。

そのため、規制強化の具体的施策として、旅行事業者に販売
する旅行サービスの開示義務と品質を監督する監督責任を負
わせるのがバランスのとれた規制になるのではないかと思い
提案することにします。

今回の貸切バス事故をみると、事故を起こしたバス会社は、
旅行を下請していた訳ですから、消費者からみたときに元請
の立場となる旅行会社には、採用したサービスの開示とサー
ビス提供品質の監督を責任として負わせる。

具体的には、旅行商品企画時のバス会社(その他ホテル、鉄道、
航空会社・・・)の選定時に、サービス品質を表示したサービ
ス仕様書のようなドキュメントの提出を求め、旅行商品の販
売時には実サービスを提供する外部業者の情報と品質内容を
開示し、サービスの監督と情報保管の義務を負わせることを
通じて、販売する旅行商品の品質管理責任と旅行会社自体の
信用が旅行業法の評価対象とする。

もちろん、これらは消費者に旅行商品購買時の選択基準をよ
り多く提供することになるため、利便性向上にも資する。消
費者がサービス品質を吟味しながら旅行商品を選択して購入
するようになれば、安全性向上への自助努力も働くでしょう。

これが、消費者のニーズに対して、事業者がサービス提供に
責任を負う等価ポイントではないでしょうか。

※この記事は、メルマガ記事の加筆・修正版であり、ビジ
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