トヨタの新型小型スポーツカーではなく、キューロクの9600
形貨物用蒸気機関車の相方のような8620形旅客用蒸気機関車
のことです。

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興味深いのはマーケティング視点から診たときに、意図的なのか
偶然なのか、機関車単体を売るのではなく列車名を売るのでもな
く、機関車の愛称を売っていたことです。

山口で「シゴナナ」を売りにしたり、秩父で「シゴハチ」を売り
にするようなことは行われていませんよね?

58654の場合、形式名と動態保存機単体との関連性をナンバー
プレートから覚えてもらうのが難しいと判断したのかどうか不明
ですが、機関車を覚えてもらうために愛称を引っ張り出したとい
うのは現代社会での蒸機の保存という観点から、記憶を立体的に
させる効果がある、極めて有効な方法ではないかと感心しました。

標準的な視点では、大正11年製のこの機関車は今年で満90歳
となる日本最古の保存蒸機という位置づけも可能なはずですし、
もちろんその点も触れられています。

この基本的な点の押しが若干弱いのは、心臓ともいえるボイラや
骨格ともいえる台枠が新しく更新されているからかもしれません。

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▲ボイラは、昭和63年新日鉄機械プラント事業部製

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▲台枠は、平成20年日本車両製

しかし、多くの事情通の方ならご存知の通り、蒸機が現役だった
当時から、ボイラ載せ替えや車輪交換、テンダ振り替え等々の交
換は一般的だったのですし、設計すら共用のパーツが多く採用さ
れていたのですから、1世紀近く経過して全ての部品がオリジナ
ルでなければいけないというのはナンセンスです。

動態保存機は元気に動いてナンボですから、この観点に沿ってい
えば58954は現在絶好調。八代の発車の際には2本の安全弁
から蒸気を噴出してフル加速をしていました。

願わくば、末永い活躍を望みます。

感謝!