そういう謂れで育ったものですから、蒸気機関車といえばテンダ
式のボックス動輪に限る、と思ってきました。

それと、もうひとつが船底型と呼ばれる炭水車の底形状。

船底型テンダー

機能ほったらかしで外観の好みを捉え優劣を評するなんていうの
は、およそ小学生の絵日記のようなレベルであってまったくどう
というほどのものではなく、いくらデジタルとはいえ、幾ばくか
の資源を使って記録を残すのは許されないのではないかとすら思
うのですが、その世界では外観的形状によって何か特別な価値が
あるかのような認識が流れているようなので、あえて触れてみま
した。

これはあくまで恥ずかしいお話です。

例えば、前面から眺めたときのそれは機能感たっぷりでまるで生
き物のよう、そこから放出される熱や音や水蒸気のエネルギーは
共感や賞賛や場合によっては畏敬を抱かせます。

対して、背面から眺めたときのそれは生命感はまったくなく、な
にかエネルギーを放出させる予感は皆無で、もちろんこちらに向かっ
て前進してくるような様子はみられない。

そんな対極的な一体を眺めて何か賞賛したい特徴を一生懸命探し
た先が、車体底部の船型形状だったというようなことでしょう。

初めて触れた畏敬の対象がこれだったのです。

しかしながら、これも戦時の資材不足がもたらした設計上の創意
工夫の産物であって、本来ならば強固な台枠の上にタンクが載る
べきところを、セミモノコック形状よろしく板材を溶接して構築
しているのだから、設計的に妥協したものでなくても生産技術的
には品質を達成するものではなかったのではないかと思われます。
過酷な石炭列車には耐久性の点で難があったそうです。

そんな戦時設計の船底型炭水車でも、製造者の良心を感じる部分が
あって、それは船を建造するのと同じように、板材を節約しながら
も溶接箇所の工夫で強度を出そうとしている部分が見られること
です。

もし船底型テンダーをみて何かを褒め愛でるのならば、そこに情
熱を注いだ人々の意を汲むところにこそ、その価値があるのでしょ
う。

感謝!