今週末で閉鎖されてしまうメルシャン軽井沢蒸留所の、おそらく
最後の試飲に供されているであろう20年シングルカスクが、樽
番号2321番のものでした。

私が訪れていたときには、19年と20年と2種類がありました
ので、もちろん両方試してみましたところ、19年の方がシェリー
が強く出ているタイプ、20年の方が樽熟成香がしっかりと出て
いるタイプでした。

話は替わって、ワイン販売の世界では「飲みやすさ」というのが
消費者に商品を理解してもらう点から、分かりやすい指標として
便利に用いられていますけれども、もしモルトウィスキーの世界
でも同様の物差しを導入するのならば、19年の方が甘くてキャ
ラクターもはっきりしていて飲みやすく、しかも価格も割安とい
うところだと思います。

しかしながら、19年と20年のわずか1年しか違わない(熟成が
年数に比例すると仮定するなら5%の差)ものを飲み比べさせて試
飲に供するというのは、「これらは違うのですよ」と口に出して言
わないけど本当は言いたいということでしょう。

つまり、その世界では20年の方が高く評価されるということを
暗にアピールしたかっただろうと思いました。

そんなことを考えながらテストしてみると、ゴールデンプロミスの
きれいな麦の味が沢の水のように走り、シェリーの香りと樽の熟
成香が風のように香るリッチでフルボディの味。マッカランによく
似ていますが、マッカランのオフィシャルほどシェリーは強くなく
より高いレベルでバランスしています。もしブラインド・テストだっ
たら、私は区別がつきません。

メルシャン軽井沢20yo 樽番号2321

私は飲み物も食べ物も甘いものが苦手なので、19年だったら遠
慮したいところですが、こちらならばモルトとシェリーとオークが
高いレベルでバランスしているので、秀逸な食後酒として特別な
ときに飲みたい感じです。

もしマッカランが、モルトウィスキー界のロールズ・ロイスという
なら、軽井沢はベントレーと言えばいいじゃないか。むしろ、ベン
トレーだと言って売ればよかったじゃないか、という感じすらいた
します。

もしこういった販売促進面の戦略的取組みが十分だったなら、余市
や山崎や秩父と同様に国際的なウィスキーコンテストの上位に並ぶ
常連として、十二分な成長事業になりうると誰もが思うポテンシャ
ルをもっています。

本家のベントレーの方は、別の会社に引き取られて新しくリニュー
アルに成功しました。モルトウィスキーのベントレーはどうでしょ
うか。不死鳥のような軽井沢が見たいですね。

メルシャン軽井沢20yo 樽番号2321

感謝!