「信州信濃のそばよりも、あたしゃあなたのそばがいい」と誰か
がいったかどうかは知りませんが、こちらの新そばは焼津の先に
あると聞いて出掛けてまいりました。

いつもの通り、数枚の盛りを頼んで、にしん棒やら鴨の合い焼き
やらを楽しんだ後、天ざるで〆ることにしています。
この最後に出てくる天ざるがいい。
温かいそばつゆに、揚げたての芝海老の掻揚げをジュっと落とし、
こちらも上げたてのそばをさっと潜らせて口に含む。
すると、下から、鰹節の旨味、正油の味わい、大根下ろしの甘味、
山葵の風味、蕎麦の滋味、海老のうま味、胡麻油の香り、衣の甘
味が完全なコントラストを描いて上がってきて、自分が生きてい
ることを確認させてくれます。
そうして有難く引き上げようとすると、おかみさんが「早めにね」
とそば粉を下さいました。

まったく、なんということでしょう。天下一のそば屋さんから新
そばのそば粉をいただいてしまいました。
こうなったら蕎麦掻きを作らなくては。
帰って早々にそば粉を看ると、まるで片栗粉のようにきめ細かく、
味はほんのり甘く、これで打った蕎麦というのはおそらくは初刷
りの浮世絵のようなものでしょう。「初い」と誰か言いませんか。
このそば粉をみて、ご主人が求める蕎麦の世界に少しだけ触れさ
せてもらった気がしました。
すなわち、こんなそば粉は仕入れでは調達できない。だから自分
で作るしかない(自家製粉ということ)。
自前で作るから、これだけ細かく、きめも揃っていて、当然香り
も豊かに立ち上がる。新そばだから色だって青い。
こんな極上のそば粉なら、いつまでも眺めていたい。とっておき
たいと思いましたが、そうも参りません。
チンチンに沸かしたお湯を注して、箸でぐるぐるとやります。
このときも驚きました。ものすごい粘り気があって腕が疲れるの
です。こんなそば粉は初めて。というよりも、そば粉はこういう
ものだったかと認識を改めることになりました。
ぐるぐる、ぐるぐる3、4分。出来上がった蕎麦掻きはこの通り。

濃口の醤油をちょっと垂らしていただくと、頭上を覆う雨雲を越
えさせてくれるような極上の滋味。
美味しくて、有難くて、思わず目を閉じます。
こういった、あれもこれも全てはこの蕎麦粉のおかげ。
このことは、たぶん一生忘れないでしょう。
感謝!
がいったかどうかは知りませんが、こちらの新そばは焼津の先に
あると聞いて出掛けてまいりました。

いつもの通り、数枚の盛りを頼んで、にしん棒やら鴨の合い焼き
やらを楽しんだ後、天ざるで〆ることにしています。
この最後に出てくる天ざるがいい。
温かいそばつゆに、揚げたての芝海老の掻揚げをジュっと落とし、
こちらも上げたてのそばをさっと潜らせて口に含む。
すると、下から、鰹節の旨味、正油の味わい、大根下ろしの甘味、
山葵の風味、蕎麦の滋味、海老のうま味、胡麻油の香り、衣の甘
味が完全なコントラストを描いて上がってきて、自分が生きてい
ることを確認させてくれます。
そうして有難く引き上げようとすると、おかみさんが「早めにね」
とそば粉を下さいました。

まったく、なんということでしょう。天下一のそば屋さんから新
そばのそば粉をいただいてしまいました。
こうなったら蕎麦掻きを作らなくては。
帰って早々にそば粉を看ると、まるで片栗粉のようにきめ細かく、
味はほんのり甘く、これで打った蕎麦というのはおそらくは初刷
りの浮世絵のようなものでしょう。「初い」と誰か言いませんか。
このそば粉をみて、ご主人が求める蕎麦の世界に少しだけ触れさ
せてもらった気がしました。
すなわち、こんなそば粉は仕入れでは調達できない。だから自分
で作るしかない(自家製粉ということ)。
自前で作るから、これだけ細かく、きめも揃っていて、当然香り
も豊かに立ち上がる。新そばだから色だって青い。
こんな極上のそば粉なら、いつまでも眺めていたい。とっておき
たいと思いましたが、そうも参りません。
チンチンに沸かしたお湯を注して、箸でぐるぐるとやります。
このときも驚きました。ものすごい粘り気があって腕が疲れるの
です。こんなそば粉は初めて。というよりも、そば粉はこういう
ものだったかと認識を改めることになりました。
ぐるぐる、ぐるぐる3、4分。出来上がった蕎麦掻きはこの通り。

濃口の醤油をちょっと垂らしていただくと、頭上を覆う雨雲を越
えさせてくれるような極上の滋味。
美味しくて、有難くて、思わず目を閉じます。
こういった、あれもこれも全てはこの蕎麦粉のおかげ。
このことは、たぶん一生忘れないでしょう。
感謝!