突然の訃報
タニナカさんのお母ちゃんが
亡くなられた

しごとを終えて
知り合いの者どうし待ち合わせて
枕きょうをあげに行く、

今朝の今朝方まで
元気に居られた様子を
伺いしって
同じ死ぬならかくも
あれかしと
頷き合っていると

故人の傍に
和服が一枚、控えるように
置いてある

「死んだらその服を
着せてくれって」
私の視線に応えるように
娘さんが言った

「見せてもらってもいい?」
いいながら
和服の包みを引き寄せて
二つ折にしてあるのを
開くと
包んであった茶色の紙に
白いメモ書きが
張り付けてある

「季節はとわない。私が死んだら
これを着せて送って下さい」
ドキンとするほど
美しい文字がつらねてあった

思わず
「この文字をどんな気持ちで
書かれたのでしょうね?
想像したら
涙がでて来そうやわ」
言ってから、一瞬、私の目がしらが
熱くなった
 
続いてもう一つの疑問

「いったい、いつ
これを書いたんでしょう?」

自分の声を聴きながら
その言葉尻の余韻が消える間もなく
視界の
「季節は問わない」の文字が
答えをくれる

「『季節はとわない』
とあるところを見ると
一季節ほど前からの様に
感じられるね••」

まばらにオレンジと白の線の
模様の入った
黒地の和服の肌触りを
私はじっと
見つめていた