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Awareness

「気づき」がすべて。

Be here now.

「今、ここに」を日々是実践。

役場を出てきた佐伯とやまちゃんは落胆していた。

「このような依頼書をもっていらっしゃっても、何が必要なのかがはっきりとしていないのでは対応しかねます。死亡しているかどうかの確認でしたら市へお問い合わせください。もっとも死亡者との関連を明記した書類の提出が必要ですが。」
庶務課の窓口で問い合わせしてみたところ、応対した職員に無愛想にそう言われると、勢い勇んで入った時とは反対に、出鼻をくじかれた二人は、役場から出てきた時にはすっかりしょげきってしまっていた。

「まあしょうがないよ。死亡の経緯を知りたいなんていっても、向こうにとってはこちらの調査なんて単なるお遊び程度のものなんだからさ。他人のプライベートな情報を、中学校の依頼書を持ってるっていったって、それだけでどうにかなるって期待をしてたこちらの方がもともとどうかしてたんだ。」
肩を落としているやまちゃんの方に向かって、佐伯はそう言った。しかし、そう言う佐伯の言葉にも心なし力がなかった。役場の自転車置き場に回った二人は、役場の周囲を取り囲んでいる低いコンクリートの壁の、一部日陰になっているところに、腰を掛けると、昼過ぎに予定している寺社への調査のことを考えて、少々気重になった。

「今度もまた断られたらどうしようか。」
足をぶらぶら揺らしながらやまちゃんが言った。脇に座っていた佐伯も自分の心の中を見透かされたような気持ちになって、その言葉に応える気力はなかった。

自分の興味ある物事がすんなりと進行することを何の疑いもなく信じきれるのは、子供の特技だ。大人になる過程でその期待を何度も裏切られることから、子供の中に、よく言えば周到さが、悪く言えば疑心深さが、それぞれ宿ることになる。佐伯とやまちゃんにとって、学校と家庭以外での社会から不用意に否定されたのはよい経験になった。