今回は収穫もあり、全体的にはすばらしい遡行になりました。
しかし、自分にとっては反省点も多く、学ぶ事の多い遡行となりました。

今回は所属している山岳会の仲間8人と西丹沢の西沢下棚沢に行ってきました。
6時に横浜駅を出発し、西丹沢自然教室に8時着。
西丹沢自然教室で登山届けを提出したところ、下棚に入渓するのは今年初めてのグループらしい。

8:15_西丹沢自然教室を出発。吊り橋ってこの歳になってもワクワク。

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今回は熊の看板なかったな~。ってことでこちらの看板。チョビ髭?それとも鼻毛?とてもユーモラスな顔に見える。

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丹沢の岩は全体的にモロい。今回は前回の鳥屋街沢とは岩質が違ってどうも花崗岩に見える。ちょっと期待しつつ、沢山あるボルダーをみて、うずうず。でも登れる岩ならエリアとして開拓されてるよな~。でも、ちょっと目がいっちゃうな~。

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F1までは沢に入らず登山道でアプローチ。天気も良いし今日の沢にも期待が増す。

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8:50_F1到着。F1が40mある事は知っていた。登山道からパッと滝が見え始めて「うぁ~高い~!」で、近づいていく。「え!?まだ?」更に近づくと周囲が開けて滝の全貌が見えた。「え~~~~~~!?」むちゃくちゃ高いがな。テンションも上がる上がる♪

早速、沢装備をonしながらルートファインディング。支点は3・4m毎に見えるので基本的には支点をたどって行けば大丈夫そう。ただ、40mもあるので上の方は分からない。「リード?」。勿論、自分が行きますよ~。ホイッスルの合図を決めて、ヌンチャクとハーケンとハンマーを持って「いざ出陣!」。だが、ここで大きなミスを一つした。支点の数を数えていなかったのだ・・・。

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以下は反省記(長いので飛ばして下さいな)
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自分にとっては久々のリード。でも、岩は毎週さわってる。沢も久し振りって訳じゃない。「十分登れる。何より40mの滝だぜ?」自分にとっては初めての体験だ。是非とも初見でリードで登りたい。そう思った。

登り始める前に、上に着いた時のホイッスルの合図を決めた。ビレー解除は一回、登ってOKなら2回。待機は連続でピピピ。終了点は滝の上部の砂の中にあるとの情報を貰い、登り始める。肝心のルートの事はあまり聞かない。「ことクライミングに関しては情報なんて無い方が面白いんだよ。」

登り始めた。思ったよりも岩がモロい。そして、かなり滑る。なのでホールドやスタンスを叩きながら慎重に足を選ぶ。一本目にクリップ。「これで安心。あとは楽しむだけ。」

登り始めてしばらくして、自分は岩登りが下手になったと感じた。岩がモロい事も影響していたのかもしれない。確実に乗れるホールドを選んでクライミングしていると片足を高く上げての、乗り込み系3点支持が基本になっている。乗り込んで片足スクワットの要領で立つ。3点支持といっても加重が3点にしっかり分配されていないのが分かる。それに何故か”手に足ムーブ”とかもしている。ボルダリングがしっかり染み付いてしまったようだ。「まぁ今は確実なスタンスやホールドを追っている訳だから大丈夫だけど、これは近々直さないとマズいな~。」

12・3m登った所で、スタンスやホールドが滝の中にしかないようだ。「シャワークライミング?行くしか無いか。」特に考えずに突っ込んでみると思ったよりもシャワークライミングはキツい。まだ水は冷たいし、思ったよりも圧力がある。水の音で何も聞こえないし、ホールドが見えない。水も入ってくる。「登り始めて10m足らずでこれか。」レインウエアのフードをメットの上から被って更に登った。

ようやく、半分ほど登っただろうか。下から何か聞こえる。見ると腰の辺りに手を当てて何か叫んでいる。自分のハーネスに手をかける。あ、ヌンチャクが足りない。「さて、どうしたものか。とりあえず手前の1・2個回収、かつヌンチャクを分解してスリング+カラビナで乗り切ろう。節約すればあと4本で十分足りそう。」そう思いクライムダウンを始めるも上の支点がしっかりしている。「テンション貰って降りた方が楽だ。」ビレーヤーにテンションをくれと叫んで、テンションをかける。と同時に2・3m落ちてビックリする。20mも登ればロープも伸びる。ただ、自分のテンションの掛け方にスポーツクライミングの感覚が残っている事に気がついた。「今のはマズい。今は平気なフリして、今後気を付けることにしよう。」1mほどローワーダウンしてヌンチャクを2本回収。その内の一本は心配なためヌンチャクをバラしてカラビナだけかけておく。

そしてまた登り始める。ヌンチャクは一本、また一本と無くなっていく。終了点でビレーする分を抜くと、ヌンチャク1本とカラビナ1本。スリングはまだ余裕があるからバラせば3クリップ分。残りは10m程度。とりあえず目の前のジャンピングの支点に最後のヌンチャクをバラしたカラビナ+スリングでクリップ。試しにかけたスリングを引っ張ってみる。「しっかり効いている。」これで残りカラビナ2本。

ここから見える支点は1.5mほど先のクラックにハーケンが一つ。更に2mほど先のスラブにスリングによる支点が見える。その先は傾斜が緩くなっているからここからは確認できない。「1.5m先のハーケンだけ飛ばせば何とか行けそうだな。ホールドは良さそうだし、3.5mほど先のスリングにクリップすれば、あとは問題無いな。」そう決めてハーケンにクリップはせず飛ばし、登り始める。

確かにホールドは良い。が、そのホールドはアンダー。乗れると思っていたスタンスは外傾していた。慎重にムーブをおこして目の前のスラブのスリング支点へクリップを試みる。が、ちょっと届かない。ヌンチャクなら引っ掛ける事が出来る距離。でもカラビナ単体はかけられない。「しょうがない、足を変えてもう一伸びするか。」スリングにしっかり手が届いた。「カラビナをかけるか」と、ハーネスに手をやったところでズルっ。

6・7mのフォールだった。「ああ、落ちちゃったな~。割と距離落ちたな。」でも落ちた感覚はいつも通り。何処も異常はなさそう。で、下を覗いてから、再度登り始める。足が滑ったけど、次はあそこどう乗り越えるかな~。「とりあえずあそこまで戻らなきゃ。」最後の支点から3mは下に居た。フリーの癖かハングドックでロープをたぐる。「ん!?」そこで目にしたのは最後にとった支点の輪っかが楕円にひん曲がっている姿。

危機感の到来。「ここはゲレンデじゃない。これはフリークライミングじゃない。」すぐに岩に張り付きテンションをなくす。落ち着くため登るのを止める。「とにかく安全に登らなきゃ。」そこで目の前のヌンチャクを一本回収。また登り始めるも、なかなか登れない。「さっきはもっと楽に登れたハズなんだけど・・・。」そこで、戦意喪失している自分に気が付く。「やばい、俺、ちょっと参ってる。気持ちを切り替えなきゃ。」「登りきったらいくらでも参って良いから、今は登る事だけに集中」と自己暗示。心を殺し、また、登り始める。

しばらく登って最後の支点の所までくると、下でなにやら指示をしている。左に巻けと指示しているのか、直登しろと指示しているのか良く分からない。左には巻くには2mのブランクセクションがある。下からはハーケンを打てと指示している。打てる所を探してみるもスラブなため打てそうな所は無い。自分にとっては直登の方が安全に思えたので、直登するとゼスチャーで伝え登り始める。

今度は先ほど飛ばしたハーケンにヌンチャクでA0して、スラブのスリングをつかみクリップして登る。ようやく、滝の終わりが見えた。「あとは残りのスラブをすいすい登れば良いだけだ。」と思い、頭を空っぽにして登る事に集中する。しかし気が付くと、最後のスラブにてハイステップで手を返してマントリングをしていた。パワーで乗り切るも、また、同じミスを犯している事に気がつく。マントルを返して登りきったが、生きた心地がしない。

登りきった所すぐに終了点が見えたので、そこでセルフをとってホイッスルを鳴らしロープを引き上げてビレーを始める。ビレーを初めてしばらくして目の前の水たまりの岩陰に大きな魚が居る事に気が付いた。「あ、魚だ。」と思ったと同時に自分の違和感に気が付き愕然とする。自分はATCを使わずに素手でロープを引き上げていたのだ。改めてフォールした事による動揺を感じた。「自分では平気なつもりでも動揺していたんだ。」すぐにATCを通してビレーを再開する。あとは何事も無かった。

フリーとアルパインは同じ岩登りでも安全管理や意識が違う。自分はアルパインをスポーツしてしまった事にものすごく反省しなくてはいけない。アルパインのリードはほぼオンサイトだけど、絶対に落ちてはいけないんだ。アルパインはフリーとは楽しみ方の質が違うんだ。自分はスラブに垂れたスリングを掴んでカラビナをクリップするべきだったんだ。テンションをかける事にもっと恐怖を感じるべきなんだ。他にも反省点はあるが、一番反省すべきはアルパインをスポーツしたことだと改めて肝に銘じた。

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下の写真は自分が最後マントルを返してしまった箇所を仲間が登っている写真。自分は足がほぼ手と同じ高さにあった気がする・・・。写真の左下に映っている赤いのは40m下に居る仲間。

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イワナを手づかみでゲット!でようやく我に返る事ができた。このイワナは弱っていたので放流。食べても美味しくなさそうだったし。
太陽から元気を集める俺。長時間のシャワークライミングとフォールで身体も心も弱っていました。一時間半近く壁に張り付いていたし、寒いのには特に弱いので。

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12:30_F2。流心の右側が登れるらしいが時間もないので巻き。40mの滝を登った後で見ると低く感じるんだけど、オブザベしてみると気持ちが萎えているの感じた。

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12:45_F3。2段7m。奥行きがあってとても良い景観。楽な滝なのでホッとする。

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12:50_F4。5m。シャワークライム必須な感じ。気温が高ければ登りたいけど、いろいろ余裕がございません。左から巻いて、懸垂下降で沢に戻る。

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13:20_F5。3段15m。ロープも出さずにぐいぐい登る。皆頼もしいな~。

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途中。流木がゴロゴロしていて、冒険さながら。沢登りの醍醐味だね。

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皆で何してる?と思いきや魚とり。川底は砂なので、濁ってもすぐ綺麗になります。余程じゃないと手づかみなんて無理っしょ?

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ヘビの顔みたいな大岩。分かるかな?
左から登るとスラブ。右から登ると挟まります。ぐぇ~。

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イワナゲット~~~~~~!!
マジっすか?ここでゲットした事が皆の闘志に火をつけた。やればできる!

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で、もう一匹ゲット!尺あるんじゃないの~。このイワナは!?
自分はいつも沢にはモンベルのメッシュギアコンテナってかばんで行くんだけど。これ、網にもなります!皆で岩陰に追いつめて、かばんをセットして岩をどけると!ガサガサっって!

とったど~~~。

超興奮したよ。早速記念撮影をしてから、頭を叩いて殺す。移動しながら鮮度を保つためにはこの方が良いらしい。自分は初体験。イワナの頭を叩くとぶるぶる震えて目に力が無くなってご臨終。勉強になります。

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14:20_F6。8m。のっけからシャワークライミング!だから寒いって!!やる気でナッキャブル。

そういえば、滝の下ちょっと離れた所には元シカが。西丹沢自然教室の職員さんから後で聞いた話では今年は例年よりも餓死するシカが多いとのこと。それもシカが増え過ぎて食料が無くなったから。丹沢では通常の3~5倍ほどのシカが棲息しているとのこと。シカは体力が無くなると山を登れなくなって沢に集まってしまうため、沢には餓死したシカの死体があるとのこと。亡くなったシカはタヌキなどに食べられ1週間程度で骨だけになってしまうとのことで、匂いがするシカの死体はまだ死んでから一週間以内であるという。ここに人間の死体を置いたら1週間で骨になっちゃうのか。ほんとかいな?今回も匂いがして気が付いた死体は3つほどあったし、前回の鳥屋街沢にもいくつか死体はあったので数が多くて餓死するシカが多いのは納得だけどね。

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15:00_2・3mのナメが連続。意外とスラブが怖い。滑ったら下まで落ちちゃうよ~。ってことでスリングを使って引き上げる。

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本日4匹目のお魚ゲット!今度はヤマメみたいだ。綺麗な斑点。ヤマメを手で捕まえるなんてやりますな~。じゅるじゅる。次回からは包丁と醤油にワサビは必携だな。

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この二股は左右対称で絵になるな~。

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ちょくちょく小規模な滝が出現。その内の一つを再びリードする。やっぱりボルダームーブになっちゃうな~。気が付いたらヒールフックしようとしてたよ。フェルトの沢靴じゃ、効く訳ないよ。

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16:30_F7。7m。見事なまでにどスラブな滝。こんなモッコリしたスラブがあったらちょっとフリーで登ってみたいな。右から巻いたが、岩はこけこけ。ここら辺からはなんか古代遺跡みたいな雰囲気だった。何か岩丸くなくて皆、直立してたからかな。

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16:40_F8。3段8m。右からも左からも登れたが、岩がモロくて注意が必要だった。

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17:00_F9。9m。ようやく最後の滝。だんだん暗くなって来て悲壮感が・・・。師匠がリードしてロープをフィックス。今更濡れるのいややっ。使えるものは何でも使って速攻登りきる。

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残りの詰め。今回は意外と短くて良かった。

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18:30_畦ヶ丸山頂到着。暗くなって来た~~~。

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下山開始もナイトハイクに。真っ暗っすわ。20:30頃下山。もうヘトヘトっすわ。

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お疲れさまでした。

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次回は食べるぞ!あれ?これ皆ヤマメか?

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