Free as a Bird | ザ・マシンガンズの必殺技(絶望日記)

ザ・マシンガンズの必殺技(絶望日記)

 心にうつりゆく よしなしごと

今日という記念日に、

一編の詩を贈ります。



わたしを束ねないで

             新川和江


わたしを束ねないで

あらせいとうの花のように

白い葱のように

束ねないでください わたしは稲穂

秋 大地が胸を焦がす

見渡すかぎりの金色の稲穂


わたしを止めないで

標本箱の昆虫のように

高原からきた絵葉書のように

止めないでください わたしは羽撃き

こやみなく空のひろさをかいさぐっている

目には見えないつばさの音


わたしを注がないで

日常性に薄められた牛乳のように

ぬるい酒のように

注がないでください わたしは海

夜 とほうもなく満ちてくる

苦い潮 ふちのない水


わたしを名付けないで

娘という名 妻という名

重々しい母という名でしつらえた座に

坐りきりにさせないでください わたしは風

りんごの木と

泉のありかを知っている風


わたしを区切らないで

,や. いくつかの段落

そしておしまいに「さようなら」があったりする手紙のようには

こまめにけりをつけないでください わたしは終りのない文章

川と同じに

はてしなく流れていく 拡がっていく 一行の詩



まさおさん さん、

お誕生日おめでとう。


                                     by スグル