とある大型スーパーの食料品売り場。
ところ狭しと並べられた鮮やかな食材。
なかでもひときわ目を引くのは、
いや、鼻腔をくすぐるものは、
要所に置かれた試食用の品々。
とりあえず、ひと口。
ここでの一番の楽しみと言っても、
決して過言ではないでしょう。
みすぼらしい男の子がふたり。
おそらくは、兄弟でしょう。
店内をわめきながら走り回っては、
競うように、次々と試食の品を、
残らず食べ尽くしていくのです。
「みすぼらしい」と表現したのは、
そのときの衝撃が強烈だったせいで、
正直なところ、どんな様子だったかは、
まったく思い出せませんし、
そんなことは、いまとなっては、
たいした問題でもありません。
しつけをなされていないこと、
それこそが「みすぼらしい」のです。
親の顔がみたいものだ。
よくそんなもの言いをしますが、
彼らの親の顔はしっかりと見ました。
手当たり次第に試食の品を、
恥ずかしげもなく素手でつかみ、
次々に食べ散らかして回る男。
かえるの子はかえる。
すべてをひと言で片づける世の中。
社会的責任をまっとうする義務は、
どこで果たされるものなのでしょうか。
by スグル